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枕草子(清少納言)

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发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层 |阅读模式
***目 次***



一 春は、あけぼの。

二 ころは、

三 正月一日は、

四 同じことなれども聞き耳異なるもの

五 思はむ子を

六 大進生昌が家に、

七 上にさぶらふ御猫は、

八 正月一日、三月三日は、

九 よろこび奏するこそ、

一〇 今内裏の東をば、



一一 山は

一二 市は

一三 峯は

一四 原は

一五 淵は

一六 海は

一七 みささぎは

一八 渡りは

一九 たちは

二〇 家は



二一 清涼殿の丑寅の隅の、

二二 生ひ先なく、

二三 すさまじきもの

二四 たゆまるるもの

二五 人にあなづらるるもの

二六 にくきもの

二七 心ときめきするもの

二八 過ぎにしかた恋しきもの

二九 心ゆくもの

三〇 檳榔毛は、



三一 説経の講師は、

三二 菩提といふ寺に、

三三 小白川といふ所は、

三四 七月ばかり、いみじう暑ければ、

三五 木の花は

三六 池は

三七 節は、

三八 花の木ならぬは

三九 鳥は

四〇 あてなるもの



四一 虫は

四二 七月ばかりに、風いたう吹きて、

四三 にげなきもの

四四 細殿に、人あまた居て、

四五 主殿司こそ、

四六 をのこはまた、随身こそ

四七 職の御曹司の西面の立蔀のもとにて、

四八 馬は、

四九 牛は、

五〇 猫は、



五一 雑色、随身は、

五二 小舎人童は、

五三 牛飼は、

五四 殿上の名対面こそ、

五五 若くてよろしき男の、

五六 若き人、ちごどもなどは、

五七 ちごは、

五八 よき家の中門あけて、

五九 滝は

六〇 河は



六一 暁に帰らむ人は、

六二 橋は

六三 里は

六四 草は

六五 草の花は

六六 集は

六七 歌の題は

六八 おぼつかなきもの

六九 たとしへなきもの

七〇 夜烏どものゐて、



七一 忍びたる所にありては、

七二 懸想人にて来たるは、

七三 ありがたきもの

七四 内裏の局は、

七五 まいて臨時の祭の調樂などは、

七六 職の御曹司におはしますころ、木立などの遥かにもの古り、

七七 あぢきなきもの

七八 ここちよげなるもの

七九 御仏名のまたの日、

八〇 頭の中将の、すずろなるそら言を聞きて、



八一 返る年の二月廿よ日、

八二 里にまかでたるに、

八三 もののあはれ知らせ顔なるもの

八四 さて、その左衛門の陣などに行きて後、

八五 職の御曹司におはしますころ、西の廂に

八六 めでたきもの

八七 なまめかしきもの

八八 宮の五節出ださせたまふに、

八九 細太刀に平緒つけて、

九〇 内裏は、五節のころこそ、



九一 無名という琵琶の御琴を、

九二 上の御局の御簾の前にて

九三 ねたきもの

九四 かたはらいたきもの

九五 あさましきもの

九六 くちをしきもの

九七 五月の御精進のほど、

九八 職におはしますころ、八月十よ日の月明るき夜、

九九 御方々、君たち、上人など、

一〇〇 中納言まゐりたまひて、

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
一 春は、あけぼの。



 春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎは少し明りて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。

 夏は、夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。雨など降るも、をかし。

 秋は、夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて、雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音(ね)など、はた言ふべきにあらず。

 冬は、つとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりて、わろし。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
二 ころは、



 ころは、正月、三月、四月、五月、七、八、九月、十一、二月、すべて、をりにつけつつ。一年ながら、をかし。
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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
三 正月一日は、



 正月一日は、まいて空のけしきもうらうらと、めづらしう霞(かす)みこめたるに、世にありとある人は皆、姿、かたち、心異(こと)につくろひ、君をも我をも祝ひなどしたる、様異(さまこと)に、をかし。

 七日、雪間の若菜摘み、青やかにて、例はさしもさるもの目近からぬ所にもて騒ぎたるこそ、をかしけれ。白馬(あをうま)見にとて、里人は、車清げにしたてて見に行く。中の御門の閾(とじきみ)引き過ぐるほど、頭、一所にゆるぎあひ、刺櫛(さしぐし)も落ち、用意せねば折れなどして、笑ふもまたをかし。左衛門の陣のもとに、殿上人などあまた立ちて、舎人の弓ども取りて、馬ども驚かし笑ふを、はつかに見入れたれば、立蔀(たてじとみ)などの見ゆるに、主殿司(とのもりづかさ)、女官などの行き違ひたるこそをかしけれ。いかばかりなる人、九重をならすらむ、など思ひやらるるに、内裏(うち)にも見るは、いと狭きほどにて、舎人の顔のきぬにあらはれ、まことに恕驻猡韦い膜趟稀⒀─韦啶椁啶橄ú肖辘郡毪长长沥筏皮い纫娍啶筏ⅠRのあがり騒ぐなどもいと恐ろしう見ゆれば、引き入られてよくも見えず。

 八日、人の、よろこびして走らする車の音、異に聞こえて、をかし。

 十五日、節供まゐり据ゑ、粥の木ひき隠して、家の御達(ごたち)、女房などのうかがふを、打たれじと用意して、常に後を心づかひしたるけしきも、いとをかしきに、いかにしたるにかあらむ、打ちあてたるは、いみじう興ありてうち笑ひたるは、いとはえばえし。ねたしと思ひたるもことわりなり。新らしう通ふ婿の君などの、内裏へまゐるほどをも心もとなう、所につけて我はと思ひたる女房の、のぞき、けしきばみ、奥の方にたたずまふを、前に居たる人は心得て笑ふを、「あなかま」と、まねき制すれども、女はた、知らず顔にて、おほどかにて居たまへり。「ここなる物、取りはべらむ」など言ひ寄りて、走り打ちて逃ぐれば、ある限り、笑ふ。男君もにくからずうち笑(え)みたるに、ことに驚かず、顔すこし赤みて居たるこそ、をかしけれ。また、かたみに打ちて、男をさへぞ打つめる。いかなる心にかあらむ、泣き腹立ちつつ、人をのろひ、まがまがしく言ふもあるこそ、をかしけれ。内裏わたりなどのやむごとなきも、今日は皆乱れて、かしこまりなし。

 除目(ぢもく)のころなど、内裏わたり、いとをかし。雪降り、いみじうこほりたるに、申文(もうしぶみ)持てありく、四位、五位、若やかにここちよげなるは、いとたのもしげなり。老いて頭(かしら)白きなどが、人に案内言ひ、女房の局などに寄りて、おのが身のかしこきよしなど、心一つをやりて説き聞かするを、若き人々はまねをし、笑へど、いかでか知らん、「よきに奏したまへ、啓したまへ」など言ひても、得たるはいとよし、得ずなりぬるこそ、いとあはれなれ。

 三月三日は、うらうらとのどかに照りたる。桃の花の今咲き始むる、柳などをかしきこそ、さらなれ。それも、まだまゆにこもりたるは、をかし。広ごりたるは、うたてぞ見ゆる。

 おもしろく咲きたる桜を長く折りて、大きなる瓶(かめ)にさしたるこそ、をかしけれ。桜の直衣(なほし)に出袿(いだしうちぎ)して、まらうどにもあれ、御せうとの君たちにても、そこ近く居てものなどうち言ひたる、いとをかし。

 四月、祭のころ、いとをかし。上達部(かんだちめ)、殿上人も袍(うへのきぬ)の濃き薄きばかりのけぢめにて、白襲(しらがさね)など同じ様に、涼しげにをかし。木々の木の葉、まだいとしげうはあらで、若やかに青みわたりたるに、霞も隔てぬ空のけしきの、なにとなくすずろにをかしきに、すこし曇りたる夕つ方、夜など、忍びたる郭公(ほととぎす)の、遠く、そら音(ね)かとおぼゆばかりたどたどしきを聞きつけたらむは、なにここちかせむ。

 祭近くなりて、青朽葉、二藍(ふたあい)の物どもおし巻きて、紙などにけしきばかりおし包みて、行き違ひ持てありくこそ、をかしけれ、末濃(すそご)、むら濃(ご)なども、常よりはをかしく見ゆ。童女(わらはべ)の、頭ばかりを洗ひつくろひて、なりは皆ほころびたえ、乱れかかりたるもあるが、屐子(けいし)、沓(くつ)などに「緒すげさせ、裏をさせ」など持て騒ぎて、いつしかその日にならむと、急ぎおしありくも、いとをかしや。あやしうをどりありく者どもの、装束き(そうぞき)したてつれば、いみじく定者(ぢやうざ)などいふ法師のやうに、ねりさまよふ、いかに心もとなからむ。ほどほどにつけて、親、叔母の女、姉などの供し、つくろひて率てありくもをかし。

 蔵人思ひしめたる人の、ふとしもえならぬが、その日、青色着たるこそ、やがて脱がせでもあらばやとおぼゆれ。綾ならぬは、わろき。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
四 同じことなれども聞き耳異なるもの



 同じことなれども聞き耳異なるもの

 法師の言葉。男の言葉。女の言葉。下肖窝匀~にはかならず文字余りたり。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
五 思はむ子を



 思はむ子を法師になしたらむこそ、心苦しけれ。ただ木の端などのやうに思ひたるこそ、いといとほしけれ。精進物(さうじもの)のいとあしきをうち食ひ、い寝(ぬ)るをも。若きは、ものもゆかしからむ。女などのある所をも、などか、忌みたるやうにさしのぞかずもあらむ。それをも、安からず言ふ。まいて、験者(げんじや)などは、いと苦しげなめり。因(こう)じてうちねぶれば、「ねぶりをもにして」など、もどかる。いと所狭(せ)く、いかにおぼゆらむ。

 これは昔のことなめり。今はいと安げなり。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
六 大進生昌が家に、



 大進(だいじん)生昌(なりまさ)が家に、宮の出でさせたまふに、東の門は四足になして、それより御輿(みこし)は入らせたまふ。北の門より、女房の車どもも、まだ陣のゐねば、入りなむと思ひて、頭つきわろき人もいたうも繕はず、寄せておるべきものと思ひあなづりたるに、檳榔毛(びらうげ)の車などは、門小さければ、障りてえ入らねば、例の、筵道(えんだう)敷きておるるに、いと憎く腹立たしけれども、いかがはせむ。殿上人、地下(ぢげ)なるも、陣に立ち添ひて見るも、いとねたし。

 御前にまゐりて、ありつるやう啓すれば、「ここにても、人は見るまじうやは。などかは、さしもうちとけつる」と笑はせたまふ。「されどそれは、目馴れにてはべれば、よくしたててはべらむにしもこそ、驚く人もはべらめ。さても、かばかりの家に車入らぬ門やはある。見えば笑はむ」など言ふほどにしも、「これ、まゐらせたまへ」とて、御硯などさし入る。「いで、いとわろくこそおはしけれ。など、その門はた、狭くはつくりて住みたまひける」と言へば、笑いて、「家のほど、身のほどにあはせてはべるなり」と答(いら)ふ。「されど、門の限りを高う造る人もありけるは」と言へば、「あな、恐ろし」と驚きて、「それは、于定国(うていこく)がことにこそはべるなれ。古き進士などにはべらずは、うけたまはり知るべきにもはべらざりけり。たまたまこの道にまかり入りにければ、かうだにわきまへ知られはべる」と言ふ。「その御道もかしこからざめり。筵道(えんどう)敷きたれど、皆おち入り騒ぎつるは」と言へば、「雨の降りはべりつれば、さもはべりつらむ。よしよし、またおほせられかくることもぞはべる。まかり立ちなむ」とて去(い)ぬ。「なにごとぞ、生昌がいみじうおぢつるは」と問はせたまふ。「あらず。車の入りはべらざりつること言ひはべりつる」と申して、おりたり。

 同じ局に住む若き人々などして、よろづのことも知らず、ねぶたければ皆寢ぬ。東の対の西の廂(ひさし)、北かけてあるに、北の障子に懸金もなかりけるを、それも尋ねず、家主なれば、案内を知りてあけてけり。あやしくかればみさわぎたる声にて、「さぶらはむはいかに、さぶらはむはいかに」と、あまたたび言ふ声にぞ、おどろきて見れば、几帳の後ろに立てたる燈台の光はあらはなり。障子を五寸ばかりあけて言ふなりけり。いみじうをかし。さらにかやうの好き好きしきわざ、ゆめにせぬものを、わが家におはしましたりとて、むげに心にまかすなめりと思ふも、いとをかし。かたはらなる人をおし起こして、「かれ見たまへ。かかる見えぬもののあるは」と言へば、頭もたげて見やりて、いみじう笑ふ。「あれは誰そ。けさうに」と言へば、「あらず。家ぬしと局主と定め申すべきことのはべるなり」と言へば、「門のことをこそ聞えつれ、障子をあけたまへ、とやは聞えつる」と言へば、「なほそのことも申さむ。そこにさぶらはむはいかに。そこにさぶらはむはいかに」と言へば、「若き人おはしけり」とて、ひきたてて去(い)ぬる後に、笑ふこといみじう、あけむとならば、ただ入りねかし、消息を言はむに、よかりなりとは誰かは言はむ、げにぞをかしき。

 つとめて、御前にまゐりて啓すれば、「さることも聞えざりつるものを。昨夜(よべ)のことにめでて行きたりけるなり。あはれ、かれをはしたなう言ひけむこそ、いとほしけれ」とて、笑はせたまふ。

 姫宮の御方の童女(わらはべ)の装束つかうまつるべきよし、おほせらるるに、「この袙(あこめ)のうはおそひはなにの色にかつかうまつらすべき」と申すを、また笑ふもことわりなり。「姫宮の御前の物は、例のやうにては、にくげにさぶらはむ。ちうせい折敷、ちうせい高坏(たかつき)などこそ、よくはべらめ」と申すを、「さてこそは、うはおそひ着たる童女も、まゐりよからめ」と言ふを、「なほ、例の人のやうに、これかくな言ひ笑ひそ。いと謹厚なるものを」と、いとほしがらせたまふも、をかし。

 中間(ちゆうげん)なりをりに、「大進、まづもの聞えむ、とあり」と言ふをきこしめして、「また、なでふこと言いて笑はれむとならむ」とおほせらるるも、またをかし。「行きて聞け」と、のたまはすれば、わざと出でたれば、「一夜の門のこと、中納言に語りはべりしかば、いみじう感じ申されて、『いかで、さるべからむをりに、心のどかに対面して申しうけたまはらむ』となむ、申されつる」とて、また異事(ことごと)もなし。一夜のことや言はむと、心ときめきしつれど、「いま、静かに、御局にさぶらはむ」とて去(い)ぬれば、帰りまゐりたるに、「さて、なにごとぞ」とのたまはすれば、申しつることを、さなむと啓すれば、「わざと消息し、呼び出づべきことにはあらぬや。おのづから端つ方、局などにゐたらむ時も言へかし」とて笑へば、「おのがここちにかしこしと思ふ人のほめたる、うれしとや思ふと、告げ聞かすならむ」と、のたまはする御けしきも、いとめでたし。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
七 上にさぶらふ御猫は、



 上にさぶらふ御猫は、かうぶり得て命婦のおとどとて、いみじうをかしければ、かしづかせたまふが、端に出でて臥したるに、乳母(めのと)の馬(むま)の命婦、「あな、まさなや。入りたまへ」と呼ぶに、日のさし入りたるに、ねぶりてゐたるを、おどすとて、「翁丸(おきなまろ)、いづら。命婦のおとど食へ」と言ふに、まことかとて、しれものは走りかかりたれば、おびえまどひて、御簾(みす)の内に入りぬ。

 朝餉(あさがれひ)の御前に上おはしますに、御覧じていみじう驚かせたまふ。猫を御ふところに入れさせたまひて、をのこども召せば、蔵人忠隆、なりなか、まゐりたれば、「この翁丸、打ち調(てう)じて、犬島へつかはせ、ただ今」とおほせらるれば、集まり狩り騒ぐ。馬の命婦をもさいなみて、「乳母かへてむ。いとうしろめたし」とおほせらるれば、御前にも出でず。犬は狩り出でて、滝口などして、追ひつかはしつ。

「あはれ、いみじうゆるぎありきつるものを。三月三日、頭の弁の、柳かづらせさせ、桃の花をかざしにささせ、桜、腰にささせなどして、ありかせたまひしをり。かかる目見むとは思はざりけむ」など、あはれがる。

「御膳(おもの)のをりは、かならず向ひさぶらふに、さうざうしうこそあれ」など言ひて、三、四日になりぬる昼つ方、犬のいみじう鳴く声のすれば、なぞの犬のかく久しう鳴くにかあらむと聞くに、よろづの犬、とぶらひ見に行く。御厠人なるもの走り来て、「あないみじ。犬を蔵人二人して打ちたまふ。死ぬべし。犬を流させたまひけるが、帰りまゐりたるとて、調(てう)じたまふ」と言ふ。心憂(う)のこと、翁丸なり。「忠隆、実房なむど打つ」と言へば、制しにやるほどに、からうじて鳴きやみ、「死にければ陣の外に引き捨てつ」と言へば、あはれがりなどする夕つ方、いみじげにはれ、あさましげなる犬のわびしげなるが、わななきありけば、「翁丸か。このころ、かかる犬やはありく」と言ふに、「翁丸」と言へど、聞きも入れず。「それ」とも言ひ、「あらず」とも口々申せば、「右近ぞ見知りたる。呼べ」とて、召せば、まゐりたり。「これは翁丸か」と見せさせたまふ。「似てはべるれど、これはゆゆしげにこそはべるめれ。また、『翁丸か』とだに言へば、喜びてまうで来るものを、呼べど寄り来ず。あらぬなめり。それは、『打ち殺して捨てはべりぬ』とこそ申しつれ。二人して打たむには、はべりなむや」など申せば、心憂がらせたまふ。

 暗うなりて、もの食はせたれど食はねば、あらぬものに言ひなしてやみぬるつとめて、御けづり髪、御手水(てうづ)などまゐりて、御鏡を持たせさせたまひて御覧ずれば、さぶらふに、犬の柱もとに居たるを見やりて、「あはれ昨日、翁丸をいみじうも打ちしかな。死にけむこそあはれなれ。なにの身にこのたびはなりぬらむ。いかにわびしきここちしけむ」と、うち言ふに、この居たる犬のふるひわななきて、涙をただ落としに落とすに、いとあさまし。さは、翁丸にこそはありけれ。昨夜は隠れ忍びてあるなりけりと、あはれに添へて、をかしきこと限りなし。御鏡うち置きて、「さは翁丸か」と言ふに、「ひれ臥して、いみじう鳴く。御前にも、いみじうおち笑はせたまふ。

 右近の内侍召して、「かくなむ」とおほせらるれば、笑ひののしるを、上にもきこしめして、わたりおはしましたり。「あさましう、犬などもかかる心あるものなりけり」と笑はせたまふ。上の女房なども聞きてまゐり集りて呼ぶにも、今ぞ立ち動く。「なほこの顔などのはれたる、ものの手をせさせばや」と言へば、「つひにこれを言ひあらはしつること」など笑ふに、忠隆聞きて、台盤所の方より、「まことにやはべらむ。かれ見はべらむ」と言ひたれば、「あなゆゆし。さらに、さるものなし」と言はすれば、「さりとも、見つくるをりもはべらむ。さのみも、え隠させたまはじ」と言ふ。

 さて後、かしこまり許されて、もとのやうになりにき。なほ、あはれがられて、ふるひ鳴き出でたりしこそ、世に知らずをかしくあはれなりしか。人などこそ、人に言はれて泣きなどはすれ。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
八 正月一日、三月三日は、



 正月一日、三月三日は、いとうららかなる。

 五月五日は、曇り暮らしたる。

 七月七日は、曇り暮して、夕方は晴れたる空に、月いと明く、星の数も見えたる。九月九日は、暁方より雨すこし降りて、菊の露もこちたく、おほひたる綿なども、いたく濡れ、うつしの香ももてはやされたる。つとめてはやみにたれど、なほ曇りて、ややもせば降り落ちぬべく見えたるも、をかし。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
九 よろこび奏するこそ、



 よろこび奏するこそをかしけれ。後をまかせて、御前の方に向かひて立てるを。拝し舞踏しさわぐよ。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
一〇 今内裏の東をば、



 今内裏の東をば、北の陣といふ。なら木のはるかに高きを、「いく尋(ひろ)あらむ」など言ふ。権中将、「もとよりうち切りて、定澄僧都の枝扇にせばや」とのたまひしを、山階寺の別当になりてよろこび申す日、近衛づかさにてこの君の出でたまへるに、高き屐子(けいし)をさへはきたれば、ゆゆしう高し。出でぬる後、「など、その枝扇をば持たせたまはぬ」と言へば、「もの忘れせぬ」と笑いたまふ。

「定澄僧都に袿(うちぎ)なし、すくせ君に袙(あこめ)なし」と言ひけむ人をこそ、をかしけれ。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
一一 山は



 山は 小倉山。鹿背山。三笠山。このくれ山。いりたち山。忘れずの山。末の松山。かたさり山こそ、いかならむとをかしけれ。いつはた山。かへる山。後瀬の山。朝倉山、よそに見るぞをかしき。おほひれ山もをかし。臨時の祭の舞人などの思ひ出でらるるなるべし。三輪の山、をかし。手向山。待ちかね山。たまさか山。耳成山。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
一二 市は



 市は 辰の市。里の市。海石榴(つば)市、大和にあまたあるなかに、長谷寺にまうづる人のかならずそこに泊るは、観音のご縁あるにや、心異なり。をふさの市。飾磨(しかま)の市。飛鳥の市。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
一三 峯は



 峰は ゆづるはの嶺。阿弥陀の峰。弥高(いやたか)の峰。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
一四 原は



 原は 瓶(みか)の原。あしたの原。園原。

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