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2004・10・30「読売新聞・編集手帳」より' s+ d5 P$ G* p* o
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名古屋市にUFJ銀行の貨幣資料館がある。古今東西のお札やコインの並ぶ展示室の隅に、体重計が置かれていた。目盛りの単位が「億円」になっている◆一万円札の束は一億円で10キロになるそうで、体重50キロの人は「五億円」と表示される。量ってみた気分はなかなか複雑で、フーテンの寅さんであれば「目方で男が売れるなら…」と映画の主題歌を口ずさむところだろう◆一万円札が1グラムという。実際に手にするお札は、数知れぬ人の汗と涙を加えてか、もう少し重たく感じられ、別れを告げる折には、さらにまた重量を増すようでもある。“体感重量”は人により、事情によって千差万別かも知れない◆処世の苦しみ多き生涯を二十四歳で閉じた樋口一葉も、質屋通いをするなど、お金の「重さ」を身にしみて知る人である。新しい五千円札の顔として野口英世(千円札)とともに、まもなく世に出る◆「なやめるものをすくうべきは、わがつとめなり」。死後に見つかった手紙の反古(ほご)に、そう記していた一葉である。福沢さんなども誘い合わせ、気軽に懐を訪れてくれるとありがたい◆小社には全国から、新潟県中越地震の被災地に贈る救援金が寄せられている。ひとつひとつは少額であろうとも、住む家をなくした失意の人々に、真心のこもった浄財の体感重量は格別だろう。 |
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