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楼主: ophelia

こころ(夏目漱石)下 先生と遺書

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 楼主| 发表于 2004-5-8 23:00:00 | 显示全部楼层
    三十七

「二人は各自(めいめい)の室(へや)に引き取ったぎり顔を合わせませんでした。Kの静かな事は朝と同じでした。私(わたくし)も凝(じっ)と考え込んでいました。

 私は当然自分の心をKに打ち明けるべきはずだと思いました。しかしそれにはもう時機が後(おく)れてしまったという気も起りました。なぜ先刻(さっき)Kの言葉を遮(さえぎ)って、こっちから逆襲しなかったのか、そこが非常な手落(てぬか)りのように見えて来ました。せめてKの後(あと)に続いて、自分は自分の思う通りをその場で話してしまったら、まだ好かったろうにとも考えました。Kの自白に一段落が付いた今となって、こっちからまた同じ事を切り出すのは、どう思案しても変でした。私はこの不自然に打ち勝つ方法を知らなかったのです。私の頭は悔恨に揺(ゆ)られてぐらぐらしました。

 私はKが再び仕切(しき)りの遥à栅工蓿─蜷_(あ)けて向うから突進してきてくれれば好(い)いと思いました。私にいわせれば、先刻はまるで不意撃(ふいうち)に会ったも同じでした。私にはKに応ずる準備も何もなかったのです。私は午前に失ったものを、今度は取り戻そうという下心(したごころ)を持っていました。それで時々眼を上げて、窑蛱鳎à胜─幛蓼筏俊¥筏筏饯我はいつまで経(た)っても開(あ)きません。そうしてKは永久に静かなのです。

 その内(うち)私の頭は段々この静かさに掻(か)き乱されるようになって来ました。Kは今窑蜗颏Δ呛韦蚩激à皮い毪坤恧Δ人激Δ取ⅳ饯欷瑲荬摔胜盲瓶埃à郡蓿─椁胜い韦扦埂2欢悉猡长螭曙L(ふう)にお互いが仕切一枚を間に置いて黙り合っている場合は始終あったのですが、私はKが静かであればあるほど、彼の存在を忘れるのが普通の状態だったのですから、その時の私はよほど調子が狂っていたものと見なければなりません。それでいて私はこっちから進んで窑蜷_ける事ができなかったのです。一旦(いったん)いいそびれた私は、また向うから働き掛けられる時機を待つより外(ほか)に仕方がなかったのです。

 しまいに私は凝(じっ)としておられなくなりました。無理に凝としていれば、Kの部屋へ飛び込みたくなるのです。私は仕方なしに立って縁側へ出ました。そこから茶の間へ来て、何という目的もなく、鉄瓶(てつびん)の湯を湯呑(ゆのみ)に注(つい)で一杯呑みました。それから玄関へ出ました。私はわざとKの室を回避するようにして、こんな風に自分を往来の真中に見出(みいだ)したのです。私には無論どこへ行くという的(あて)もありません。ただ凝(じっ)としていられないだけでした。それで方角も何も構わずに、正月の町を、むやみに歩き廻(まわ)ったのです。私の頭はいくら歩いてもKの事でいっぱいになっていました。私もKを振(ふる)い落す気で歩き廻る訳ではなかったのです。むしろ自分から進んで彼の姿を咀嚼(そしゃく)しながらうろついていたのです。

 私には第一に彼が解(かい)しがたい男のように見えました。どうしてあんな事を突然私に打ち明けたのか、またどうして打ち明けなければいられないほどに、彼の恋が募(つの)って来たのか、そうして平生の彼はどこに吹き飛ばされてしまったのか、すべて私には解しにくい問題でした。私は彼の強い事を知っていました。また彼の真面目(まじめ)な事を知っていました。私はこれから私の取るべき態度を決する前に、彼について聞かなければならない多くをもっていると信じました。同時にこれからさき彼を相手にするのが変に気味が悪かったのです。私は夢中に町の中を歩きながら、自分の室に凝(じっ)と坐(すわ)っている彼の容貌(ようぼう)を始終眼の前に描(えが)き出しました。しかもいくら私が歩いても彼を動かす事は到底できないのだという声がどこかで聞こえるのです。つまり私には彼が一種の魔物のように思えたからでしょう。私は永久彼に祟(たた)られたのではなかろうかという気さえしました。

 私が疲れて宅(うち)へ帰った時、彼の室は依然として人気(ひとけ)のないように静かでした。

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 楼主| 发表于 2004-5-9 23:00:00 | 显示全部楼层
     四十一

「私はちょうど他流試合でもする人のようにKを注意して見ていたのです。私は、私の眼、私の心、私の身体(からだ)、すべて私という名の付くものを五分(ぶ)の隙間(すきま)もないように用意して、Kに向ったのです。罪のないKは穴だらけというよりむしろ明け放しと評するのが適当なくらいに無用心でした。私は彼自身の手から、彼の保管している要塞(ようさい)の地図を受け取って、彼の眼の前でゆっくりそれを眺(なが)める事ができたも同じでした。

 Kが理想と現実の間に彷徨(ほうこう)してふらふらしているのを発見した私は、ただ一打(ひとうち)で彼を倒す事ができるだろうという点にばかり眼を着けました。そうしてすぐ彼の虚(きょ)に付け込んだのです。私は彼に向って急に厳粛な改まった態度を示し出しました。無論策略からですが、その態度に相応するくらいな緊張した気分もあったのですから、自分に滑稽(こっけい)だの羞恥(しゅうち)だのを感ずる余裕はありませんでした。私はまず「精神的に向上心のないものは馬鹿(ばか)だ」といい放ちました。これは二人で房州(ぼうしゅう)を旅行している際、Kが私に向って使った言葉です。私は彼の使った通りを、彼と同じような口調で、再び彼に投げ返したのです。しかし決して復讐(ふくしゅう)ではありません。私は復讐以上に残酷な意味をもっていたという事を自白します。私はその一言(いちごん)でKの前に横たわる恋の行手(ゆくて)を塞(ふさ)ごうとしたのです。

 Kは真宗寺(しんしゅうでら)に生れた男でした。しかし彼の傾向は中学時代から決して生家の宗旨(しゅうし)に近いものではなかったのです。教義上の区別をよく知らない私が、こんな事をいう資格に乏しいのは承知していますが、私はただ男女(なんにょ)に関係した点についてのみ、そう認めていたのです。Kは昔から精進(しょうじん)という言葉が好きでした。私はその言葉の中に、禁欲(きんよく)という意味も唬à长猓─盲皮い毪韦坤恧Δ冉忉嫟筏皮い蓼筏俊¥筏丰幛菍g際を聞いて見ると、それよりもまだ厳重な意味が含まれているので、私は驚きました。道のためにはすべてを犠牲にすべきものだというのが彼の第一信条なのですから、摂欲(せつよく)や禁欲(きんよく)は無論、たとい欲を離れた恋そのものでも道の妨害(さまたげ)になるのです。Kが自活生活をしている時分に、私はよく彼から彼の主張を聞かされたのでした。その頃(ころ)からお嬢さんを思っていた私は、勢いどうしても彼に反対しなければならなかったのです。私が反対すると、彼はいつでも気の毒そうな顔をしました。そこには同情よりも侮蔑(ぶべつ)の方が余計に現われていました。

 こういう過去を二人の間に通り抜けて来ているのですから、精神的に向上心のないものは馬鹿だという言葉は、Kに取って痛いに違いなかったのです。しかし前にもいった通り、私はこの一言で、彼が折角(せっかく)積み上げた過去を蹴散(けち)らしたつもりではありません。かえってそれを今まで通り積み重ねて行かせようとしたのです。それが道に達しようが、天に届こうが、私は構いません。私はただKが急に生活の方向を転換して、私の利害と衝突するのを恐れたのです。要するに私の言葉は単なる利己心の発現でした。

「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」

 私は二度同じ言葉を繰り返しました。そうして、その言葉がKの上にどう影響するかを見詰めていました。

「馬鹿だ」とやがてKが答えました。「僕は馬鹿だ」

 Kはぴたりとそこへ立ち留(ど)まったまま動きません。彼は地面の上を見詰めています。私は思わずぎょっとしました。私にはKがその刹那(せつな)に居直(いなお)り強盗のごとく感ぜられたのです。しかしそれにしては彼の声がいかにも力に乏しいという事に気が付きました。私は彼の眼遣(めづか)いを参考にしたかったのですが、彼は最後まで私の顔を見ないのです。そうして、徐々(そろそろ)とまた歩き出しました。

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发表于 2004-7-11 23:00:00 | 显示全部楼层
辛苦你了,累吧???
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 楼主| 发表于 2004-7-28 19:25:18 | 显示全部楼层
丢的帖子太多了,我会另开帖子补充完整。
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发表于 2004-8-17 05:54:14 | 显示全部楼层
こころ写的非常好!那时我也真的为他感动的流泪!多谢楼主!楼主辛苦了
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