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星新一 小说连载 (一)

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发表于 2009-4-13 22:39:57 | 显示全部楼层 |阅读模式
 いじわるな星
2 S4 u, y' A% N) B
) K. g6 u) {" ?& q, S0 i+ v. e4 l3 L1 v3 a( k7 f: J
 宇宙パトロール隊によって、たまたま発見されたジフ惑星についてのニュースは、地球の人びとの関心をよびおこした。通りがかりに観察しただけだが、そう大きな惑星ではないといえ、海があり川があり、山があり谷があり、森や野原もあるようだとの報告だった。% A7 G& X6 m4 A# J4 n% ?& x
 住民はいないらしいという。なお、ジフ惑星という名は、その星の固有の名ではなく、発見者であるパトロール隊員の名にちなんで、かくのごとくつけられたのだ。6 X: f1 b* d" o2 a5 `6 j
 そんなことはともかく、地球ではみな大喜びだった。人口過剰ぎみの地球にとって、このうえない植民地であり、別荘地である。また、その位置からみて、宇宙へさらに発展するための絶好の中継地ともいえる。価値のある資源にも、富んでいるにちがいない。/ f6 `( Y& `& L( g# t2 P' p  A9 ~

$ u& Q3 J6 L& W' R6 g! o6 ] かくして、第一次基地建設隊が編成され、彼らの乗った宇宙船が出発していった。ジフ惑星の地理を調べ、簡単な空港を作り、通信塔をたてることなどが任務だった。これからは、多くの人がジフ惑星を訪れることになるはずだ。それに必要な体制を、まず整えなければならないのだ。+ {# n3 ]" h9 l, }6 G
 まじめで優秀な隊員たちと資材とをつんだ宇宙船は、虚空の旅をつづけ、やがてジフ惑星へと着陸した。隊員たちは、景色を眺めて歓声をあげた。
% E( ]7 x; f& j' \* C: @& p6 J「なんという、すばらしい星なのだろう。あたりには美しい花が咲き、そのむこうには、静かな緑の森がある」
! I1 y' K7 l5 k  B( ^* o「さらに遠くには、青い山々が見える。なによりも気持ちがいいのは、ほかに人影がみあたらないことだ。大ぜいの人でごみごみした地球にくらべると、まったく、天国としか言いようがない」
$ z9 _; }# P) T% | みなは口々に、うれしさを話しあった。だが、隊長はさすがに使命を忘れず、命令を下した。
" K3 M/ M" `$ Q0 `% n「さあ、さっそく仕事にかかろう。宇宙船につんできた資材を、運び出せ」* W$ D2 H8 I, T4 C+ H% I
「はい……」
" A' v& _/ m9 y2 w' k 隊員たちは従いかけたが、その場で足をとめ、鼻での呼吸をくりかえした。どこからともなく、いいにおいがただよってきたのだ。それは料理のにおいだった。
# k) V" r! Y& S4 h- i8 B* A" S「おれの気のせいかな。うまそうな、においがするが……」$ p0 s# V, x3 S7 P6 w* l2 R
「おれの鼻にも、におう。すぐ近くからのようだ」
+ m* Y2 T  H/ ~% h" z  Q( v みなは仕事にかかるのをやめ、周囲をさがした。においのもとは、すぐみつかった。
% [. g! f9 \/ u8 J5 g2 O 一枚の白い布が、野原にひろげられてある。その上に、いくつもの大きな銀の皿が並んでいた。もちろん、皿だけではない。肉や魚や新鮮な野菜などを使った、豪華な料理が、それに盛られているのだ。
/ L2 \. _+ J: T9 P, k 地球の一流レストランでも、めったにお目にかかれないような高級な料理であり、しかも量が多かった。皿のまわりには、グラスにつがれた酒もあった。これらの料理や酒から、かおりがたちのぼり、みんなの鼻を刺激したのだ。
* S* D8 L" j& W% T( J/ t しかし、この無人のはずの惑星に、このようなものが存在するとは、どうにも信じられない現象だった。思わず近よりかける隊員たちに、隊長は大声で言った。
# w) p2 Q' f9 j8 s% F7 x「みな、注意しろ。これはただごとではない。警戒心をゆるめるな」
) e* a1 u% `+ {- _1 o: w9 r# n7 R 強い命令だったが、隊員たちにとっては従いにくいことだった。地球を出発して以来、単調きわまる宇宙食ばかりを、あてがわれてきている。宇宙食にはあきあきしていた。もっとも、普通の場合なら、使命感と自制心とによって、それに耐えることはできる。
4 C$ ?1 N9 ]+ s5 c, P4 ]* C9 g  g しかし、こう実物を目の前に出されては、誘惑に抵抗しがたい。さらに、まわりの美しい景色も、食欲をかきたてる。ついに一人の隊員はがまんしきれなくなり、ふらふらと近づき、手を伸ばした。
0 Y1 s! U2 o. |8 v) J そのとたん、料理の皿も、酒も、すべてが消えてしまった。あとには草があるばかり。においも残っていない。みなは顔をみあわせた。, I: T" P$ ^1 E: Q+ O2 Y* z
「幻影だったようだ。宇宙の旅に疲れた、われわれの心がうみだした幻だったのだろう」
: m+ x8 C+ y& x: P9 K( ]+ P  Q; d「しかし、それにしても、うまそうな料理だったな。おれの目と鼻とには、印象が強く焼きついてしまった。口にはまだ唾液がたまっているし、胃は音をたてている」
. `0 }' F* L. a( e0 L3 k! o 隊長は、また命令を下した。& x; h* |0 Z" M  z1 R& M4 v; C  {
「さあ、幻覚のことは忘れて、仕事にかかろう。われわれには、任務がある」
7 g7 l6 e/ p1 H8 N+ ~* ` しかし、みながなにかをはじめようとすると、その料理の幻が現れるのだった。各人が分散して、仕事をはじめようとすると、それぞれの隊員のそばに現れる。そして、いかにもうまそうな形とにおいとで、誘惑するのだ。幻影とはわかっていても、つい手を伸ばしてしまう。だが、その瞬間に消えてしまい、苦笑いしてわれにかえると、また現れるのだ。
9 M& A/ X! I. C. W  R  N それだけのことで、直接の危険があるわけではないのだが、まるで仕事にならなかった。日数がたっても、なれるどころか、いらいらした感情は、ますますひどくなる。
% d# C2 G- G/ x7 N$ b" x 不眠症になる者もあった。宇宙食がのどを通らなくなり、栄養不良になる者もあった。幻の料理を追って、さまよいつづける者もあった。建設の計画は少しも進まない。3 J9 r0 f( o& M+ Y% T
 ついに隊長は、いちおう地球へ戻ることにした。ノイローゼ状態の隊員たちを乗せ、宇宙船は地球に帰還した。, Q# w4 ]% N( N9 }
 第一次の隊は、かくのごとく失敗に終った。だが、基地建設の計画を、あきらめるわけにはいかない。といって、べつな隊員を送りこんでも、同様な結果になることだろう。- X3 B# f* Q1 d7 p1 C! F- T2 K

  L3 @6 u3 T$ \& j- {" I 会議が重ねられ、作戦がねられ、第二次宇宙船が出発していった。これには腕のいい料理人が乗組み、最高級の料理材料や酒がつみこまれた。そのために宇宙船はより大型となったが、やむをえないことだった。なにしろ、ほかに方法がないのだ。隊員たちの心を料理の幻から守り、平静に保つには、それに匹敵する現実の品を作って与えなければならない。
$ K0 E" C$ J, S7 [, p このような準備のもとに、第二次の宇宙船はジフ惑星に着陸した。まず、着陸祝いもかねて、料理人は腕をふるった。いい酒もつがれ、みな充分に満足した。これならもう、幻が現れても、気を散らされることはない。" L% u- P9 Z4 c
 しかし、その時、どこからか美しい歌声がしてきた。心をとかすようなメロディーだった。みながそちらに目をやると、若く美しい女性の姿があった。均整のとれた魅惑的なからだで、それがはっきりとわかるような薄い布の着物をまとっている。目は情熱的で、口もとには微笑があり、歌を口ずさんでいるのだった。
. ^3 j3 k0 y2 L 隊員の一人は、隊長がとめるのもきかず、かけだしていって抱きついた。いや、本人は抱きついたつもりだったのだが、とたんに、その姿は消えうせた。( V0 }3 D7 f4 p3 p+ P
 これをきっかけとし、美女の幻はいたるところに出現しはじめた。手でふれようとすると、たちまち消え、あきらめるとまた出現する。手におえない幻だった。
1 a# _0 |6 c, g9 K2 s1 A 資材を運ぼうとすると現れ、組みたてようとすると現れる。気を散らさないためには、目をつぶらねばならず、目をつぶっては仕事にならない。また、目をつぶっても、耳には歌声がはいってくるし、耳に|栓《せん》をしても、心をそそる体臭がする。1 N0 e& N! l6 G4 a
 建設作業は少しも進展せず、またノイローゼ患者が続出した。第一次よりもっとひどかった。隊長は彼らを宇宙船に収容し、地球へとひきかえした。
* ]" _9 T* X0 K 第三次の宇宙船は、さらに大型なものとなった。料理人と材料のほか、よりすぐった美女たちが同行したのだ。大変なむだにはちがいないが、それくらいの犠牲を払っても、ジフ惑星には基地を建設する価値がある。6 D) Z+ S  z  [2 k4 R# a
 かくして、万全の準備と自信を持って乗りこんだのだが、着陸と同時に、またも予期しなかった事件が発生した。- ]# k8 S7 T( y2 @* K4 ?$ k
 あらたな幻が現れたのだ。宝石の幻、ミンクのコートの幻、美しい服の幻、上等な化粧品の幻などが出現した。男の隊員たちは平気だったが、女性たちとなると、そうはいかない。彼女たちは不平を言い、不満を叫び、泣き声をあげた。
8 X2 i6 v8 {% n. | 例によって、幻は手にとろうとすると消え、あきらめると現れる。彼女たちにはさんざん悩まされた。地球へ帰りたいとだだをこね、ヒステリー状態におちいった。男の隊員たちは、それをおさえ、なだめることに専念しなければならず、仕事どころではなかった。
6 @% |" G) Q5 h% e 第三次の宇宙船も、なんらの成果をあげることなく、むなしく地球に戻らねばならなかった。
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 第何次かの宇宙船は、ものすごく巨大なものとなった。料理や美女はもちろん、あらゆるぜいたく品、遊び道具、なにからなにまで、最高級のものがつみこまれたのだった。スポーツカーもあり、モーターボートもあり映画のフィルムも大量にそろえ、ゴルフ用具からルーレットまで含まれていた。
7 J& D4 X+ \$ A, L0 I1 c) J これなら、いかなる幻にも対抗できるはずだった。そして、大きな自信のもとに、ジフ惑星へと着陸した。! Y6 q5 M" J+ q+ Y3 H# ~8 S
 もはや、なんの幻も出現しなかった。すべての幻が消えていた。料理の幻も、美女の幻も、宝石の幻もなくなっていた。しかし、それとともに、もっと大きな幻も消えていたのだった。
% z4 I# X$ S  }1 ~ 海も川も山も、また森も野原も消えていた。わずかの水も流れていず、花ひとつ咲いていなかった。ただ、灰色っぽい岩ばかりが、単調にひろがっている。だれかがその岩を分析してみたが、有用な鉱物はなにひとつ含まれていなかった。
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