咖啡日语论坛

 找回密码
 注~册
搜索
查看: 2338|回复: 1

[阅读] 鷺沢 萠的作品 卒業 原文

[复制链接]
发表于 2010-9-8 20:01:00 | 显示全部楼层 |阅读模式
卒業
鷺沢萠
“あーあァ。”
早春の日ざしが白い革张りのソファーに映っている。半円形に张り出した形で作られた居间の中で、ソファーの上に一六七センチの细长い体躯を投げ出すと、下から见上げる部屋の感じはいつもとは少し违って见える。大きくため息をついた珠美は、ソファーの上であおむけに寝転がったまま膝を立てて脚を组んだ。
  広い居间の向こう侧、大きなテレビの前で、姉の直美は正座したまま上半身だけ前方に折り曲げた格好で、さっきから热心に新闻を読んでいる。
  “あーあァ。”
  珠美がもう一度ため息をつくと、ソファーの阴で姉の体がぴくりと动いた。直美は猫のあくびのような姿势のままで、颜だけこちらに向けてぶつりと言った。
  “何があーあァ、よ。”
  “べぇづにィ。”
  珠美は颜を背けるようにして、再び窓の外を见つめた。
  半円形の居间の壁面いっぱいをガラス窓にしたのは母である。この家が建ったのはもう六、七年前、珠美はまだ小学生だったが、それでも建筑屋や设计士の打ち合わせ、出来上がってきた図面にさまざまな注文をつけて変更をさせたりしたのはすべて母であったことを覚えている。
  半円形の窓に沿わせて置いてある白い革のソファーは西ドイツ制とかで、日本には十组くらいしかないのだという。これも麻布の店で母が见つけてきた。あのころ珠美は、子供の自分ですらワクワクするような家をつくるという计画に、どうして父が参加しないのか不思议でならなかった。母が父にそうさせないというのではなかった。子供の目から见ても、父は自分からそれを放弃していた。
  けれど高校の卒业式を明日に控えた今は、珠美にもあのころの父の気持ちがわかる。この家は、纷れもなく母が建てた、母の家なのである。
  幼いころから自分の家はどうもよその家とは违うようだ、くらいの认识はあった。朝早き仕事に出かけていく母と、娘たちのために食事を作り、洗濯をし、扫除をする父。父は売れないイラストレーターだった。
  それでも珠美たちがまだ小さかったころは、父もわずかずつではあるが仕事をしていた。それはとても一家四人を支えられるほどの収入にはならなかったが、しかし父が絵えを书いているとき、母はどことなくうれしそうだった。
  珠美たちが成长するにつれて、母の仕事は飞跃的に成功し、自分の事务所を持つまでになった。家も建った。そうして父は、だんだん仕事をしなくなった。
  珠美は父が好きだった。背の高いところだけは母に似たが、性格的には父に似ているように思う。父のあっけらかんとしたところ、悪びれないところが大好きだった。
  父には、どんな悪いことをされても「ごめんね、ごめんね。」と片手拝みの笑颜で言われると、「しょうがないなあ。」と许してあげたくなるような、そんあ魅力があった。
  姉の直美は珠美とは逆に、やせっぽちでから体の小さなところだけを父から受け継いだようである。身长は一五二センチでと止まったまま脳みそをだけいちずな発育を遂げ、去年大学院を出て今は研究员として母校に勤めている。姉はおそらく、嫌っていたとまでは言わないまでも、父を苦々しい思いで见ていたのではないかと珠美は思う。父が何か问题を起こしたとき――例えば酔っぱらい运転でトラ箱に入ったりしたとき――家族の対応は三人三様だった。まったく冷静に振る舞う母、ただただ心配してうろたえる珠美、そして怒りまくる姉の直美。――まったくもう、利之サンは。直美はそんなふうに、父を名前で呼んだ。
  その父が、二周间前にいなくなった。置き手纸などという陈腐なものを残して、突然家でをしてしまった。これを思うとさすがの珠美も腹立たしくなるのだが、女の人といっしょだったらしい。
  父がいなくなっても、家の中にはなんの変化も起きなかった。母は相変わらず仕事に忙しいし、直美は本を読んでいるか机にかじりついているかのどちらかである。学校はとっくに休みになっている珠美はというと、卒业式に备えてクリーニングに出しておいた制服が戻ってくると后はもうすることもなく、毎日毎日テレビを见たり雑志をめくったりしていた。
  姉の直美はそんな珠美を时々しかりつける。
  「あんた卒业したらどうするつもりなの。」
  「别に・・・・・・。短大はエスカレーターだし。」
  「あんたね、目标ってものはないの。」
  「・・・・・・ない。」
  すると直美はいらいらした调子でまくしたてる。目标がないということは人间をだめにする。どんなことでもいいから目标を持ちなさい。
姉は一度、语学関系の専门学校や留学コースのパンフレットをどっさり家に持ち帰ったことがあった。ずっと以前に、珠美がぼんやりと「あたし同时通訳っていうのになりたいなあ・・・・・・。」とつぶやいたの覚えていたらしい。それはただ単に、そのときちょうどテレビに出ていた同时通訳の女性がキレイでカッコよかった。
しかし直美は言う。
「キッカケはどんなことでもいいんです。あんな短大に行くくらいなら、何年间か外国で暮らしてみなさい。」
珠美は心のなかで「耳にタコができてその上にまたタコができた・・・・・・。」とつぶやきながら、不机嫌な颜で自分の部屋に引き扬げる。自分の进路のことなどよりも、父がいなくなったというのにどうして母も姉もあんなに平然としているんだろうと考える。
父の失踪に関しては、珠美には特别に腹立ちを覚える一つの理由があった。
父は年が明けてまもなく、スーツを新调したのである。光沢のあるグルーンの生地は、成金趣味とも言えるようなものであったが、いかにも父らしいと思って珠美はなんとなく愉快だった。父自身もまた、そのスーツをえらく気に入って、にこにこしながら「いつ着ようか。」と言っていた。
母や姉はそんな父をあきれ颜で见ていたが、父は子供のようにはしゃいでいて、なんだかかわいかった。だから珠美は言ったのだ。
――パパ、それあたしの卒业式のときに着て来てよ。
父は一瞬、惊いた颜で珠美を见て、そして言った。
――いいの?
――え?
――いいの?こんな派手なので行っても・・・・・・。
珠美が笑ってうなずくと、父もうれしそうな颜になって言ったのである。
――じゃあ、そうしようか。
それなのに父は、珠美の卒业式を待たずに「家出」してしまった。せっかく新调したスーツも持たずに。それはたまみに対する裏切りのように思える。家出はしかたがないこととしても、二周间くらい待ってくれてもよいではないかという気がする。
しょせん、父にとってはこの家も珠美も、たいしたものではなかったのかもしれない。そう考えるとひどく寂しい。
翌朝起きて阶下へ降りていく途中、ふと、父が帰って来ているのではないかという気がした。いつもの笑颜で「ごめんね、ごめんね。」と言いながら、食卓についているのではないか。そして父は言うのだ。
――卒业式、今日だったよね。
しかしダイニングに入ったとたん、その空想ははかなく消えた。コートを着て出かける用意をした母が立ったままでコーヒーを饮んでおり、まだガウンを着ている直美はテーブルに新闻を広げていた。
「ごめん珠美、今日行けそうもないの。」
母がでかけ际に慌ただしく言った。
「うん、いいよ别に。」
小学校も中学校も、卒业式に母は来られなかった。その母の多忙のおかげでたま见たちは生活ができるのだから、文句を言える筋合いではない。
卒业式はつつがなく终わった。何人かの同级生は泣いていたが、クラスのほぼ全员は持ち上がりの短大に进むわけで别れを惜しむということない。珠美はしらけていた。
讲堂から退场するとき、父兄席のわきの道路を并んで歩きながら、ぼんやりと周囲を见渡した珠美は、ハッと息をのんだ。
ダークグレーや黒いが大半を占める父兄席の中に、ひときわ目立つ明るいグリーンを见つけたのだ。
――やっぱり来てくれたんだ。
笑颜を作りかけてそちらのほうをよく见たとき、珠美はもう一度惊いた。
ぐりーんのすーつをきているのは父ではなかった。だぶだぶの上着のそでをまくりズボンのすそも折り曲げてそのスーツを着ている人は直美だった。
金ぶちの眼镜をかけ、仏顶面とさえ言えるような表情で投げやりな拍手をしている直美のほうに、珠美の视线は钉付けになった。半ば口を开いたままで退场する珠美を、直美は苦々しい表情になってみつめ、身ぶり手ぶりで「口を闭じて前を向け」と知らせた。泣き颜のクラスメートが惊いて珠美のほうを振り返った。珠美は慌てて笑いを饮み込み、チャプリンを彷佛させるような姉の背広姿もう一度胸に描いた。
――顽张って同时通訳になろうか・・・・・・。
今度心の中でつぶやいた言叶には、数年前テレビを见ながらぼんやりとつぶやいた同じ言叶よりは重みがあるようだった。



最近在寫論文。。。到處都找不到原文 於是索性找到了和大家分享下~
回复

使用道具 举报

发表于 2011-5-9 12:10:46 | 显示全部楼层
これは高校生の卒業論文か。。。見るのは初めて、どうも日記みたいなもんだよな。。。
回复 支持 反对

使用道具 举报

您需要登录后才可以回帖 登录 | 注~册

本版积分规则

小黑屋|手机版|咖啡日语

GMT+8, 2024-5-5 11:47

Powered by Discuz! X3.4

© 2001-2017 Comsenz Inc.

快速回复 返回顶部 返回列表