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4 不吉なカーブを回る(13)
部屋の床は板ばりで、中央に六畳間ほどの広さのカーペットが敷かれ、その上に応接セットとフロア?スタンドがあった。がっしりとした食卓セットは部屋の隅に押しやられて、白いほこりをかぶっていた。
実にがらんとした部屋だった。
部屋の壁にはめだたないドアがあり、ドアをあけるとそこは六畳ほどの広さの納戸だった。納戸には余分な家具やカーペットや食器、ゴルフ?セット、置きもの、ギター、マットレス、オーバーコート、登山靴、古雑誌といったものが所狭しと積みあげられていた。中学校の受験参考書やラジオ?コントロールの飛行機まであった。それらの殆んどは五〇年代中頃にかけての産物だった。
この建物の中で時間は奇妙な流れ方をしていた。居間に置かれた旧式の柱時計と同じだ。人々が気紛れにやってきては分銅を巻き上げる。分銅が上っている限り、時はコツコツと音を立てて流れる。しかし人々が去り分銅が下りてしまうと時はそこで止まる。そして静止した時の塊りが床の上に色あせた生活の層を積み上げる。
僕は何冊かの古い映画雑誌を持って居間に戻り、それを開いてみた。グラビアの紹介映画は「アラモ」だった。ジョン?ウェインの初監督(かんとく)映画で、ジョン?フォードも全面的に応援していると書いてあった。アメリカ人の心に残る立派な映画を作りたいとジョン?ウェインにはまるで似合っていなかった。
彼女がコーヒーを持って現われ、我々は向いあってそれを飲んだ。雨粒が断続的に窓を叩いていた。時が少しずつ重みを増やし、冷ややかな薄闇とまじりあいながら部屋を浸(ひた)した。電灯の黄色い光が花粉(かふん)のように空中を漂っていた。
「疲れたの?」と彼女が訊ねた。
「たぶんね」と僕はぼんやりと外の風景を眺めながら言った。「ずっと探しまわってきて、急に立ち止ったからね。きっとうまくなじめないんだ。それに苦労してやっと写真の風景に辿りついたというのに鼠も羊もいない」
「眠りなさい。そのあいだに食事の用意をしておくから」
彼女は二階から毛布を持ってきて、僕にかけてくれた。そして石油ストーブを用意し、僕の唇に煙草をはさんで火をつけてくれた。
「元気を出して。きっとうまくいくわよ」
「ありがとう」と僕は言った。
そして彼女は台所に消えた。
一人になると体が急に重くなったようだった。僕は二口吸ってから煙草を消し、毛布を首までひっぱりあげて目を閉じた。眠り込むまでにほんの数秒しかかからなかった。
房间铺有木地板,在其中央铺有六个榻榻米大小的地毯,其上面放有会客用的家具和落地灯。很结实的餐桌被推到了房子的一角,餐桌上面布满了白色的灰尘。
实际上这里是空荡荡的客厅。
在墙壁上装有一不显眼的门,打开门一看那里是约六个榻榻米大小的储藏室。在狭窄的储藏室里堆满了多余的家具、地毯、餐具、高尔夫用具、装饰品、吉他、床垫、大衣、登山靴、古杂志等。甚至连中学的考试参考书和遥控飞机都有。那些东西几乎都是五十年代中期的产物。
在这个建筑物内时间以奇妙的方式流逝着。和客厅所放的旧式的掛钟一样。人们无规律地来到这里给发条上劲。发条上劲后,时间就发出沙沙的声音往前移动着。当人们走了之后发条释放完弹力,时间就停止到那里。静止的时间让在地板上堆起一层层多彩的生活。
我拿了几本旧的电影杂志回到客厅,翻开那些书看一看。在卷首介绍的电影是《アラモ》。因为是约翰维因初次导演的电影,约翰福特也对约翰维因给以全面称赞。想在美国人的心中制作杰出的电影作品,对约翰维因来说并不合适。
她端着咖啡走了出来,我们面对面地喝了起来。雨点断断续续地敲打着窗户。时间还在不断地加重,和冰凉的阴暗混杂着浸入到房间。电灯的黄色光线像花粉那样在空中漂浮着。
“累了吗?”她问。
“有点。”我无神地眺望着外面的风景说。“就这样一直搜索过来,突然间停到了这里。真是并不那么完全适应。尽管很辛苦地终于找到了和照片风景对应的地方,可是老鼠和羊却都不在。”
“你睡一会儿吧。在这段时间里我给你准备一些吃的。”
她从二楼拿来毛毯,给我盖上。接着把煤油炉点着,给我的嘴里放上烟,并点着。
“抖擞出精神,肯定有好结果。”
“谢谢。”我说。
然后她去了厨房。
只剩下我一个人后身体好象猛地沉重起来。我吸了两口烟后把烟灭掉,把毛毯展开盖到脖子处闭上眼。到熟睡也只用了几秒钟。 |
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