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7(2)
結局タクシーを拾って中心地に行き、デパートで買い物をして暇を潰すことにした。靴下と下着を買い、予備の電池を買い、旅行用の歯ブラシと爪きりを買った。夜食用のサンドイッチを買い、ブランディーの小瓶を買った。どれも特に必要というものでもなかった。ただの暇潰しのための買い物だった。それでとにかく二時間が潰れた。
それから僕は大通りを散歩し、特に目的もなく店のウィンドウを覗き、それにも飽きると喫茶店に入ってコーヒーを飲みジャック?ロンドンの伝記の続きを読んだ。そうこうしているうちにやっと夕暮れがやってきた。長い退屈な映画を見ているような一日だった。時間を無駄に潰すというのもなかなか骨の折れるものなのだ。
ホテルに戻ってフロントの前を通りすぎようとしたとき、誰かが僕の名を呼んだ。例の眼鏡をかけた受付の女の子だった。彼女がそこから僕を呼んでいた。僕がそちらに行くと、彼女はちょっと離れたカウンターの隅の方に僕をつれていった。そこはレンタカーの受付デスクになっていたが、看板のわきにパンフレットが積んであるだけで、係員は誰もいなかった。
彼女はしばらくボールペンを手の中でくるくると回しながら、何か言いたそうだがどう言えばいいのかわからないといった顔つきで僕を見ていた。彼女は明らかに混乱して迷って恥ずかしがっていた。
「申しわけないんですが、レンタカーの相談してるみたいなふりをしてて下さい」と彼女は言った。そして横目でちらりとフロントの方を見た。「お客様と個人的に話しちゃいけないって規則で決められているんです」
「いいよ」と僕は言った。「僕がレンタカーの値段を君に訊いて、君がそれに答えてる。個人的な話じゃない」
彼女は少し赤くなった。「ごめんなさい。ここのホテル、すごく規則がうるさいんです」
僕はにっこりした。「でも眼鏡がすごくよく似合ってる」
「失礼?」
「その眼鏡が君によく似合っている。とても可愛い」と僕は言った。
彼女は指で眼鏡の縁をちょっと触った。それから咳払いした。たぶん緊張しやすいタイプなのだろう。「実はちょっとうかがいたいことがあったんです」と彼女は気をとりなおして言った。「個人的なことなんです」
僕はできることなら彼女の頭を撫でて気持ちを落ち着けてやりたかったけれどそうもいかないので、黙って相手の顔を見ていた。
「昨日話してらっしゃった、以前ここにあったホテルのことなんですけど」と彼女は小さな声で言った。「同じ名前の、ドルフィン?ホテルっていう……。それはどんなホテルだったんですか?まともなホテルだったんですか?」
僕はレンタカーのパンフレットを一枚手にとって、それを眺めているふりをした。「まともなホテルというのはどういうことを意味するんだろう、具体的に?」
彼女は白いブラウスの両方の襟を指でつまんでひっぱって、それからまた咳払いした。
最终打的去了市中心,在商场买东西消磨时间。买了袜子和内衣,买了备用电池,买了旅行用的牙刷和指甲刀。买了晚餐用的三明治,还买了一小瓶白兰地。哪一个都不是特别需求的。也只是为了消磨时间而买东西。就这样花费了两个小时。
之后是在大街上散步,特别无目的地看店铺的窗户,这样看够之后去了一个咖啡店喝着咖啡继续读杰克传记的续集。在这样不知不觉中夜幕降临了。这一天就像是在看长篇的无聊的电影。无聊地消磨时间也是相当费劲的。
回到宾馆将要经过柜台时有谁在叫我的名字。就是那位戴眼镜的女服务员。是她从柜台那里在叫我。我朝那里走去,她把我带到了稍微离开柜台的一个角落。那里是出租汽车服务处,在广告牌傍边放有好多小册子,但却没有管理员。
她拿着圆珠笔在手中转了一会儿,想要说什么却又不知怎么说为好,用那种神态望着我。她很明显混乱、迷感又害羞。
“实在对不起。我们装作成出租车服务那种方式的交谈。”她说。接着她斜视了一下柜台那里。“这里有规定,不能和客人谈个人的事情。”
“这很好。”我说。“我向你咨询出租车价格,你就给我回答。这并不是个人的事。”
她稍微脸红一点。“对不起。这个宾馆的规定很讨厌。”
我笑了一下。“你的眼镜非常合适。”
“哪里做错了?”
“那幅眼镜和你很相配。很可爱。”我说。
她手指摸了一下眼镜框,之后咳嗽一下。大概是因为太紧张了吧。“实际上你所寻问的问题是存在的。”她调整了神态之后说。“这可是个人的问题。”
若是可能的话真想用手抚摸一下她的头使她沉静下来,但不可以,只好静下来看着她。
“昨天你说的事情,就是以前在这里那个宾馆之事。”她小声地说。“而且同一个名字、叫海豚宾馆……。那是一个什么样的宾馆呢?很正规的宾馆吗?”
我拿了一本出租车小册子,装成阅读的样子。“你说的正规的宾馆是什么意思呢?请具体地说。”
她用手指捏住白衬衫的两襟,又咳嗽一下。 |
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