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僕は服を着替え、冷蔵庫からオレンジ?ジュースを出して飲み、車の鍵と財布をポケットに入れた。そして「さて」と思った。でも何かを忘れているような気がした。そう、髭を剃り忘れているのだ。僕は洗面所に行って、丁寧に髭を剃った。そして鏡を見ながら、まだ二十代だといっても通用するだろうか、と考えてみた。するかもしれない。でも僕が二十代に見えたって見えなくたって、そんなことおそらく誰も気にもしないだろうな、と思った。どうでもいいことなのだ。それから僕はもう一度歯を磨いた。
外は良い天気だった。夏がもうそこまで来ていた。雨さえ降らなければとても感じの良い季節だ。僕は半袖のシャツに薄いコットンのズボンをはき、サングラスをかけ、ユキのマンションまでスバルを走らせた。ロ笛まで吹いた。
かっこう、と僕は思った。
夏だ。
僕は車を運転しながら林間学校のことを思い出した。林間学校では三時に昼寝の時間があった。でも僕はとても昼寝なんかできなかった。さあ眠りなさいと言われて眠れるわけがないじゃないか、と僕は思った。でも大抵の人間はぐっすりと眠っていた。僕は一時間ずっと天井を見ていた。ずっと天井を見ていると、天井が独立した世界みたいに思えてくる。そこに行けばこことはまったく違う世界に入り込めるような気がする。価値の転換した上下逆の世界。『鏡の国のアリス』みたいに。僕はずっとそんなことを考えていた。だから僕が林間学校で思い出せるのは天井のことだけだ。かっこう。
後ろのセドリックがクラクションを三回鳴らした。信号が青に変わっていた。落ち着けよ、と僕は思った。急いだって、それほど立派な場所に行けるわけでもないだろう?僕はゆっくりと車を出した。
とにかく夏だ。
僕がマンションの玄関のベルを押すと、ユキはすぐに下に降りてきた。彼女は上品なプリント地の半袖のワンピースにサンダルをはき、深い青色の革のショルダー?バッグを肩にかけていた。
「今日はシックななりをしてるね」と僕は言った。
「二時から人に会うって言ったでしょう?」と彼女は言った。
「とてもよく似合うよ。品がいい」と僕は言った。「大人になったみたいに見える」
彼女は微笑んだだけで何も言わなかった。
我换上衣服,从冰箱里拿出果汁饮料喝掉,把车钥匙和钱包放进口袋。这时突然想到忘掉了什么。对,忘了刮胡子。我去卫生间,细致地把胡子刮掉。然后对着镜子想,说是保持二十岁还是行得通。也许会是那样。当然我也想,看成是二十岁还是不看成,恐怕没有谁会注意这些的。怎样都无所谓了。然后我又刷了一次牙。
外面的天气还不错。夏天已经来到了这里。若是不下雨的话那是感觉非常好的季节。我穿上半䄂的衬衫和薄棉纱裤,戴上眼镜,开本去雪的公寓。而且吹着口哨。
这样很好。我想。
真是夏天了。
我一边开着车想到了林间学校。在林间学校三点钟有午休时间。可是我怎么也睡不着。被强迫说着请睡觉也睡不着。当然大部分人在深度睡眠之中。在一个小时里就一直盯着天花板。死盯着天花板就想到,那里天井是独立的世界。若能去那里的话就会进入到和这里完全不同的世界。那是转换价值的相逆的世界。就像《镜之国的アリス》。我一直在思考那样的事。所以我能想到的林间学校的事情也只有天花板之事。还好。
后面的セドリック车按了三次喇叭。交通信号变绿了。别着急。若是着急的话,就不能到达那么漂亮的地方了。我慢慢地启动了车。
真是夏天了。
我按下公寓大门的门铃后,雪马上走了下来。她穿着上等的印花的半袖连衣裙、皮鞋,还挎有深绿色的小包。
“今天的打扮也太震动了。”我说。
“不是给你说过,两点钟要和人见面吗。”她说。
“太合适了。上等的。”我说。“看上去像是大人了。”
她只是微笑一下什么也没有说。 |
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