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楼主: 相扑迷

(文章阅读)日文版阿Q正伝

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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:39:27 | 显示全部楼层
「阿Qの罰当りめ。お前の世嗣(よつ)ぎは断(た)えてしまうぞ」
 阿Qの耳枺à撙撙郡郑─沃肖摔悉长紊_かに聞えていた。彼はそう想った。
「ちげえねえ。一人の女があればこそだ。子が断(た)え孫が断(た)えてしまったら、死んだあとで一碗の御飯を供える者がない。……一人の女があればこそだ」
 一体「不孝には三つの種類があって後嗣(あとつ)ぎが無いのが一番悪い」、そのうえ「若敖之鬼餒而(むえんぼとけのひぼし)」これもまた人生の一大悲哀だ。だから彼もそう考えて、実際どれもこれも聖賢の教(おしえ)に合致していることをやったんだが、ただ惜しいことに、後になってから「心の駒を引き締めることが出来なかった」
「女、女……」と彼は想った。
「……和尚(陽器(ようき))は動く。女、女!……女!」と彼は想った。
 われわれはその晩いつ時分になって、阿Qがようやく鼾をかいたかを知ることが出来ないが、とにかくそれからというものは彼の指先に女の脂がこびりついて、どうしても「女!」を思わずにはいられなかった。
 たったこれだけでも、女というものは人に害を与える代物(しろもの)だと知ればいい。
 支那の男は本来、大抵皆聖賢となる資格があるが、惜しいかな大抵皆女のために壊されてしまう。商(しょう)は妲己(だっき)[#「妲己」は底本では「姐己」]のために騒動がもちあがった。周(しゅう)は褒(ほうじ)のために破壊された? 秦……公然歴史に出ていないが、女のために秦は破壊されたといっても大して間違いはあるまい。そうして董卓(とうたく)は貂蝉(てんぜん)のために確実に殺された。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:39:51 | 显示全部楼层
 阿Qは本来正しい人だ。われわれは彼がどんな師匠に就いて教(おしえ)を受けたか知らないが、彼はふだん「男女の区別」を厳守し、かつまた異端を排斥する正気(せいき)があった。たとえば尼、偽毛唐の類(るい)。――彼の学説では凡ての尼は和尚と私通している。女が外へ出れば必ず男を誘惑しようと思う。男と女と話をすればきっと碌なことはない。彼は彼等を懲しめる考(かんがえ)で、おりおり目を怒らせて眺め、あるいは大声をあげて彼等の迷いを醒(さま)し、あるいは密会所に小石を投げ込むこともある。
 ところが彼は三十になって竟(つい)に若い尼になやまされて、ふらふらになった。このふらふらの精神は礼教(れいきょう)上から言うと決してよくないものである。――だから女は真に悪(にく)むべきものだ。もし尼の顔が脂漲っていなかったら阿Qは魅せられずに済んだろう。もし尼の顔に覆面が掛っていたら阿Qは魅せられずに済んだろう――彼は五六年前(ぜん)、舞台の下の人混(ひとご)みの中で一度ある女の股倉(またくら)に足を挟まれたが、幸いズボンを隔てていたので、ふらふらになるようなことはなかった。ところが今度の若い尼は決してそうではなかった。これを見てもいかに異端の悪(にく)むべきかを知るべし。
 彼は「こいつはきっと男を連れ出すわえ」と思うような女に対していつも注意してみていたが、彼女は決して彼に向って笑いもしなかった。彼は自分と話をする女の言葉をいつも注意して聴いていたが、彼女は決して艶(つや)ッぽい話を持ち出さなかった。おおこれが女の悪(にく)むべき点だ。彼等は皆「偽道徳」を著(き)ていた。そう思いながら阿Qは
「女、女!……」と想った。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:41:08 | 显示全部楼层
 その日阿Qは趙太爺の家(うち)で一日米を搗いた。晩飯が済んでしまうと台所で煙草を吸った。これがもしほかの家なら晩飯が済んでしまうとすぐに帰るのだが趙家は晩飯が早い。定例(じょうれい)に拠るとこの場合点燈を許さず、飯が済むとすぐ寝てしまうのだが、端無くもまた二三の例外があった。
 その一は趙太爺が、まだ秀才に入らぬ頃、燈(あかり)を点じて文章を読むことを許された。その二は阿Qが日雇いに来る時は燈を点じて米搗くことを許された。この例外の第二に依って、阿Qが米搗きに著手(ちゃくしゅ)する前に台所で煙草を吸っていたのだ。
 呉媽(ウーマ)は、趙家の中(うち)でたった一人の女僕(じょぼく)であった。皿小悚蛳搐盲皮筏蓼Δ缺伺猡蓼垦鼟欷紊悉俗筏瓢ⅲ绚葻o駄話をした。
「奥さんはきょうで二日御飯をあがらないのですよ。だから旦那は小妾(ちいさい)のを一人買おうと思っているんです」
「女……呉媽……このチビごけ」と阿Qは思った。
「うちの若奥さんは八月になると、赤ちゃんが生れるの」
「女……」と阿Qは想った。
 阿Qは煙管(きせる)を置いて立上った。
「内(うち)の若奥さんは……」と呉媽はまだ喋舌(しゃべ)っていた。
「乃公とお前と寝よう。乃公とお前と寝よう」
 阿Qはたちまち強要と出掛け、彼女に対してひざまずいた。
 一刹那(せつな)、極めて森閑(しんかん)としていた。
 呉媽はしばらく神威(しんい)に打たれていたが、やがてガタガタ顫え出した。
「あれーッ」
 彼女は大声上げて外へ馳(か)け出し、馳(か)け出しながら怒鳴っていたが、だんだんそれが泣声に変って来た。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:42:27 | 显示全部楼层
 阿Qは壁に対(むか)って跪坐(きざ)し、これも神威に打たれていたが、この時両手をついて無性(ぶしょう)らしく腰を上げ、いささか沫(あわ)を食ったような体(てい)でドギマギしながら、帯の間に煙管を挿し込み、これから米搗きに行(ゆ)こうかどうしようかとまごまごしているところへ、ポカリと一つ、太い物が頭の上から落ちて来た。彼はハッとして身を転じると、秀才は竹の棒キレをもって行手を塞いだ。
「キサマは峙眩à啶郅螅─蚱黏筏郡省¥长臁ⅳ长笮笊筡
 竹の棒はまた彼に向って振り下された。彼は両手を挙げて頭をかかえた。当ったところはちょうど指の節の真上で、それこそ本当に痛く、夢中になって台所を飛び出し、門を出る時また一つ背中の上をどやされた。
「忘八蛋(ワンパダン)」
 後ろの方で秀才が官話(かんわ)を用いて罵る声が聞えた。
 阿Qは米搗場に駈(かけ)込んで独り突立っていると、指先の痛みはまだやまず、それにまた「忘八蛋(ワンパダン)」という言葉が妙に頭に残って薄気味悪く感じた。この言葉は未荘の田舎者はかつて使ったことがなく、専(もっぱ)らお役所のお歴々(れきれき)が用ゆるもので印象が殊の外深く、彼の「女」という思想など、急にどこへか吹っ飛んでしまった。しかし、ぶっ叩かれてしまえば事件が落著して何の障(さわ)りがないのだから、すぐに手を動かして米を搗き始め、しばらく搗いていると身内が熱くなって来たので、手をやすめて著物(きもの)をぬいだ。
 著物(きもの)を脱ぎおろした時、外の方が大変騒々しくなって来た。阿Qは自体賑やかなことが好きで、声を聞くとすぐに声のある方へ馳(か)け出して行った。だんだん側(そば)へ行ってみると、趙太爺の庭内でたそがれの中ではあるが、大勢集(あつま)っている人の顔の見分けも出来た。まず目につくのは趙家のうちじゅうの者と二日も御飯を食べないでいる若奥さんの顔も見えた。他に隣の鄒七嫂(すうしちそう)や本当の本家の趙白眼(ちょうはくがん)、趙司晨(ちょうししん)などもいた。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:43:07 | 显示全部楼层
 若奥さんは下部屋(しもべや)からちょうど呉媽を引張り出して来たところで
「お前はよそから来た者だ……自分の部屋に引込んでいてはいけない……」
 鄒七嫂も側(そば)から口を出し
「誰だってお前の潔白を知らない者はありません……決して気短なことをしてはいけません」といった。
 呉媽はひた泣きに泣いて、何か言っていたが聞き取れなかった。
 阿Qは想った。「ふん、面白い。このチビごけが、どんな悪戯(いたづら)をするかしらんて?」
 彼は立聴きしようと思って趙司晨の側(そば)までゆくと、趙太爺は大きな竹の棒を手に持って彼を目蒐(めが)けて跳び出して来た。
 阿Qは竹の棒を見ると、この騒動が自分が前に打たれた事と関係があるんだと感づいて、急に米搗場に逃げ帰ろうとしたが、竹の棒は意地悪く彼の行手を遮った。そこで自然の成行きに任せて裏門から逃げ出し、ちょっとの間(ま)に彼はもう土穀祠(おいなりさま)の宮の中にいた。阿Qは坐っていると肌が粟立(あわだ)って来た。彼は冷たく感じたのだ。春とはいえ夜になると残りの寒さが身に沁(し)み、裸でいられるものではない。彼は趙家に置いて来た上衣(うわぎ)がつくづく欲しくなったが、取りに行けば秀才の恐ろしい竹の棒がある。そうこうしているうちに村役人が入って来た。
「阿Q、お前のお袋のようなものだぜ。趙家の者にお前がふざけたのは、つまり目上を犯したんだ。お蔭で乃公はゆうべ寝ることが出来なかった。お前のお袋のようなものだぜ」
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:44:02 | 显示全部楼层
 こんな風に一通り教訓されたが、阿Qはもちろん黙っていた。挙句の果てに、夜だから役人の酒手を倍増しにして四百文出すのが当前(あたりまえ)だということになった。阿Qは今持合せがないから一つの帽子を質に入れて、五つの条件を契約した。


一、明日(みょうにち)紅蝋燭(べにろうそく)一対(目方一斤の物に限る)線香一封を趙家に持参して謝罪する事。
二、趙家では道士を喚んで首縊(くく)りの幽霊を祓う事(首縊幽霊(くびくくりゆうれい)は最も獰猛なる悪鬼(あくき)で、阿Qが女を口説いたのもその祟りだと仮想する)。費用は阿Qの負担とす。
三、阿Qは今後決して趙家の閾(しきい)を越えぬ事。
四、呉媽に今後意外の変事があった時には、阿Qの責任とす。
五、阿Qは手間賃と袷を要求することを得ず。

 阿Qはもちろん皆承諾したが、困ったことにはお金が無い。幸い春でもあるし、要らなくなった棉(わた)入れを二千文に質入れして契約を履行した。そうして裸になってお辞儀をしたあとは、確かに幾文(いくもん)か残ったが、彼はもう帽子を請け出そうとも思わず、あるだけのものは皆酒にして思い切りよく飲んでしまった。
 一方趙家では、蝋燭も線香もつかわずに、大奥さんが仏参(ぶつさん)の日まで蔵(しま)っておいた。そうしてあの破れ上衣の大半は若奥さんが八月生んだ赤坊(あかんぼう)のおしめになって、その切屑は呉媽の鞋底(くつぞこ)に使われた。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:44:54 | 显示全部楼层
       第五章 生計問題

 阿Qはお礼を済ましてもとのお廟(みや)に帰って来ると、太陽は下りてしまい、だんだん世の中が変になって来た。彼は一々想い廻した結果ついに悟るところがあった。その原因はつまり自分の裸にあるので、彼は破れ袷がまだ一枚残っていることを想い出し、それを引掛けて横になって眼を開けてみると太陽はまだ西の墻(まがき)を照しているのだ。彼は起き上りながら「お袋のようなものだ」と言ってみた。
 彼はそれからまたいつものように街に出て遊んだ。裸者の身を切るようなつらさはないが、だんだん世の中が変に感じて来た。何か知らんが未荘の女はその日から彼を気味悪がった。彼等は阿Qを見ると皆門の中へ逃げ込んだ。極端なことには五十に近い鄒七嫂まで人のあとに跟(つ)いて潜り込み、その上十一になる女の児(こ)を喚び入れた。阿Qは不思議でたまらない。「こいつ等(ら)はどれもこれもお嬢さんのようなしなしていやがる。なんだ、売淫(ばいた)め」
 阿Qはこらえ切れなくなってお馴染(なじみ)の家(うち)に行って探りを入れた。――ただし趙家の閾(しきい)だけは跨(また)ぐことが出来ない――何しろ様子がすこぶる変なので、どこでもきっと男が出て来て、蒼蝿(うるさ)そうな顔付(かおつき)を見せ、まるで乞食(こじき)を追払(おっぱら)うような体裁で
「無いよ無いよ。向うへ行ってくれ」と手を振った。
 阿Qはいよいよ不思議に感じた。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:45:35 | 显示全部楼层
 この辺の家(うち)は前から手伝が要るはずなんだが、今急に暇になるわけがない。こりゃあきっと何か曰くがあるはずだ、と気をつけてみると、彼等は用のある時には小DON(しょうドン)をよんでいた。この小Dはごくごくみすぼらしい奴で痩せ衰えていた。阿Qの眼から見ると王※[#「髟/胡」、149-6]よりも劣っている。ところがこの小わッぱめが遂に阿Qの飯碗を取ってしまったんだから、阿Qの怒(いかり)尋常一様のものではない。彼はぷんぷんしながら歩き出した。そうしてたちまち手をあげて呻(うな)った。
「鉄の鞭で手前を引ッぱたくぞ」
 幾日かのあとで、彼は遂に錢府(せんふ)の照壁(衝立(ついたて)の壁)の前で小Dにめぐり逢った。「讎(かたき)の出会いは格別ハッキリ見える」もので、彼はずかずか小Dの前に行(ゆ)くと小Dも立止った。
「畜生!」阿Qは眼に稜(かど)を立て口の端へ沫(あわ)を吹き出した。
「俺は虫ケラだよ。いいじゃねぇか……」と小Dは言った。
 したでに出られて阿Qはかえって腹を立てた。彼の手には鉄の鞭が無かった。そこでただ殴るより仕様がなかった。彼は手を伸して小Dの辮子を引掴むと、小Dは片ッぽの手で自分の辮根(べんこん)を守り、片ッぽの手で阿Qの辮子を掴んだ。阿Qもまた空いている方の手で自分の辮根を守った。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:46:01 | 显示全部楼层
 以前の阿Qの勢(いきおい)を見ると小Dなど問題にもならないが、近頃彼は飢餓のため痩せ衰えているので五分々々の取組となった。四つの手は二つの頭を引掴んで双方腰を曲げ、半時間の久しきに渡って、錢府の白壁の上に一組の藍色の虹形(にじがた)を映出(えいしゅつ)した。
「いいよ。いいよ」見ていた人達はおおかた仲裁する積りで言ったのであろう。
「よし、よし」見ている人達は、仲裁するのか、ほめるのか、それとも煽(おだ)てるのかしらん。
 それはそうと二人は人のことなど耳にも入らなかった。阿Qが三歩進むと小Dは三歩退(しりぞ)き、遂に二人とも突立った。小Dが三歩進むと阿Qは三歩退き、遂にまた二人とも突立った。およそ半時間……未荘には時計がないからハッキリしたことは言えない。あるいは二十分かもしれない……彼等の頭はいずれも埃がかかって、額の上には汗が流れていた。そうして阿Qが手を放した間際に小Dも手を放した。同じ時に立上って同じ時に身を引いてどちらも人ごみの中に入った。
「覚えていろ、馬鹿野郎」阿Qは言った。
「馬鹿野郎、覚えていろ」小Dもまた振向いて言った。
 この一幕(ひとまく)の「竜虎図」は全く勝敗がないと言っていいくらいのものだが、見物人は満足したかしらん、誰(たれ)も何とも批評するものもない。そうして阿Qは依然として仕事に頼まれなかった。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:46:36 | 显示全部楼层
 ある日非常に暖かで風がそよそよと吹いてだいぶ夏らしくなって来たが、阿Qはかえって寒さを感じた。しかしこれにはいろいろのわけがある。第一腹が耗(へ)って蒲団も帽子も上衣(うわぎ)もないのだ。今度棉入れを売ってしまうと、褌子(ズボン)は残っているが、こればかりは脱ぐわけには行(ゆ)かない。破れ袷が一枚あるが、これも人にやれば鞋底の資料になっても、決してお金にはならない。彼は往来でお金を拾う予定で、とうから心掛けていたが、まだめっからない。家の中を見廻したところで何一つない。彼は遂におもてへ出て食を求めた。
 彼は往来を歩きながら「食を求め」なければならない。見馴れた酒屋を見て、見馴れた饅頭を見て、ずんずん通り越した。立ちどまりもしなければ欲しいとも思わなかった。彼の求むるものはこの様なものではなかった。彼の求むるものは何だろう。彼自身も知らなかった。
 未荘はもとより大きな村でもないから、まもなく行(ゆ)き尽してしまった。村端(はず)れは大抵水田であ[#「水田であ」は底本では「水あ田で」]った。見渡す限りの新稲(しんいね)の若葉の中に幾つか丸形の活動の悚蓼欷皮い毪韦稀⑻铯蚋罐r夫であった。阿Qはこの田家(でんか)の楽しみを鑑賞せずにひたすら歩いた。彼は直覚的に彼の「食を求める」道はこんなまだるっこいことではいけない思ったから、彼は遂に靜修庵(せいしゅうあん)の垣根の外へ行った。
 庵のまわりは水田であった。白壁(しらかべ)が新緑の中に突き出していた。後ろの低い垣の中に菜畑があった。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:47:04 | 显示全部楼层
 阿Qはしばらくためらっていたが、あたりを見ると誰も見えない。そこで低い垣を這い上って何首烏(かしゅう)の蔓(つる)を引張るとザラザラと泥が落ちた。阿Qは顫える足を踏みしめて桑の樹に攀(よ)じ昇り、畑中(はたなか)へ飛び下りると、そこは繁りに繁っていたが、老酒(ラオチュ)も饅頭も食べられそうなものは一つもない。西の垣根の方は竹藪で、下にたくさん筍(たけのこ)が生えていたが生憎ナマで役に立たない。そのほか菜種があったが実を結び、芥子菜(からしな)は花が咲いて、青菜は伸び過ぎていた。
 阿Qは試験に落第した文童のような謂れなき屈辱を感じて、ぶらぶら園門の側(そば)まで来ると、たちまち非常な喜びとなった。これは明かに大根畑だ。彼がしゃがんで抜き取ったのは、一つごく丸いものであったが、すぐに身をかがめて帰って来た。これは確かに尼ッちょのものだ。尼ッちょなんてものは阿Qとしては若草の屑のように思っているが、世の中の事は「一歩退(しりぞ)いて考え」なければならん。だから彼はそそくさに四つの大根を引抜いて葉をむしり捨て著物の下まえの中に蔵(しま)い込んだが、その時もう婆(ばば)の尼は見つけていた。
「おみどふ(阿弥陀仏)、お前はなんだってここへ入って来たの、大根を盗んだね……まあ呆れた。罪作りの男だね。おみどふ……」
「俺はいつお前の大根を盗んだえ」阿Qは歩きながら言った。
「それ、それ、それで盗まないというのかえ」と尼は阿Qの懐ろをさした。
「これはお前の物かえ。大根に返辞をさせることが出来るかえ。お前……」
 阿Qは言いも完(おわ)らぬうちに足をもちゃげて馳(か)け出した。追っ馳けて来たのは、一つのすこぶる肥大の罚à恧い蹋─恰ⅳ长欷悉い膜獗黹Tの番をしているのだが、なぜかしらんきょうは裏門に来ていた。筏悉铯螭铯笞筏い膜い评搐啤ⅳⅳ铯浒ⅲ绚瓮龋à猡猓─藝yみつきそうになったが、幸い著物の中から一つの大根がころげ落ちたので、狗は驚いて飛びしさった。阿Qは早くも桑の樹にかじりつき土塀を跨いだ。人も大根も皆垣(かき)の外へころげ出した。狗は取残されて桑の樹に向って吠えた。尼は念仏を申(まお)した。
 尼が狗をけしかけやせぬかと思ったから、阿Qは大根を拾う序(ついで)に小石を掻き集めたが、狗は追いかけても来なかった。そこで彼は石を投げ捨て、歩きながら大根を噛(かじ)って、この村もいよいよ駄目だ、城内に行(ゆ)く方がいいと想った。
 大根を三本食ってしまうと彼は已(すで)に城内行(ゆき)を決行した。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:47:42 | 显示全部楼层
       第六章 中興から末路へ

 阿Qが再び未荘に現われた時はその年の中秋節が過ぎ去ったばかりの時だ。人々は皆おッたまげて、阿Qが帰って来たと言った。そこで前の事を囘想してみると、彼はいつも城内から帰って来ると非常な元気で人に向って吹聴したもんだが、今度は決してそんなことはなかった。ひょっとすると、彼はお廟(みや)の番人に話したかもしれない、未荘のしきたりでは趙太爺と錢太爺ともう一人秀才太爺(しゅうさいだんな)が城内に行(ゆ)けば問題になるだけで、偽毛唐でさえも物の数にされないのだから、いわんや阿Qにおいてをやだ。だから番人の親爺も彼のために宣伝するはずもないのに、未荘の人達がどうして知っていたのだろう。
 だが阿Qの今度の帰りは前とは大(おおい)に違っていた。確かにはなはだ驚異の値打があった。
 空の色が胜盲评搐繒r、彼は酔眼朦朧(すいがんもうろう)として、酒屋の門前に現われた。彼は櫃台(デスク)の側へ行って、腰の辺から伸した手に一杯握っていたのは銀と銅。櫃台(デスク)の上にざらりと置き、「現金だぞ、酒を持って来い」と言った。見ると新しい袷を著て、腰の辺には大搭連(おおどうらん)がどっしりと重みを見せ、帯紐が下へさがって弓状(ゆみなり)の弧線(なりせん)をなしている。
 未荘の仕来りとして誰でもちょっと目覚ましい人物を見出した時、侮るよりもまず敬うのである。現在これが明かに阿Qであると知りながら破れ袷の阿Qとは別々である。古人の言葉に「たとい三日の間でも別れた人に逢った時には目を見張ってその特徴を見出さなければならん」といっている。そういうわけで、ボーイも番頭も見ず知らずのそこらの人も、一種の疑いを持ちながら自然と敬いの態度を現わした。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:48:27 | 显示全部楼层
 番頭はまず合点して話しかけた。
「ほう阿Q、お前さん、帰っておいでだね」
「帰って来たよ」
「景気がいいねえ。お前さんは――にいたの……」
「城内に行っていた……」この一つのニウスは二日目に未荘じゅうに伝わった。人々はみな、現金と新しい袷を持っている阿Qの中興史を聴きたく思った。そういうわけで、酒屋の中でも茶館の中でも廟(おみや)の軒下でも、皆だんだんに探りを入れて聴き出した。その結果阿Qは新奇の畏敬を得た。
 阿Qの話では、彼は挙人太爺(きょじんだんな)の家(うち)のお手伝をしていた。この一節を聴いた者は皆かしこまった。この老爺(だんな)は姓を白(はく)といい城内切っての挙人であるから改めて姓をいう必要がない。挙人という話が出ればつまり彼である。これは未荘だけでそう言っているのではない、この辺百里の区域の内は皆そうであった。人々はほとんど大抵彼の姓名を挙人老爺(きょじんだんな)だと思っていた。そのお方のお屋敷でお手伝していたのはもちろん敬うべきことである。けれど阿Qの言うとこにゃ、彼はもう行ってやる気はない。この挙人老爺は実に非常な「馬鹿者」だ。この話を聴いた者はみな歎息して嬉しがった。阿Qは挙人老爺の家で働くような人ではないが、働かないのも惜しいこった。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:49:06 | 显示全部楼层
 阿Qの話でみると、彼が帰って来たのは城内の人が気に入らぬからであるらしい。これはつまり、長(チャンテン)(長床几(ながしょうぎ))を条(デウテン)ということや、葱の糸切を魚の中に入れたり、そのうえ近頃見つけ出した欠点は、女の歩き方がいやにねじれてはなはだよくない。しかしまた大(おおい)に敬服すべき方面もある。早い話が未荘の田舎者は三十二枚の竹牌(ちくはい)(牌の目の二面を以て成立った牌)を打つだけのことで、麻将(マーチャン)を知っている者は偽毛唐だけであるが、城内では小さな餓鬼(がき)までが皆よく知っている。なんだって偽毛唐が、城内の十歳そこそこの子供の手の中に入ってしまうのか。これこそ「小鬼が閻魔様と同資格で会見する」様なもので、聴けば赤面の到りだ。「てめえ達は、首斬(くびきり)を見たことがあるめえ」と阿Qは言った。「ふん、見てくれ、革命党を殺すなんておもしれえもんだぜ」
 彼は首をふると、ちょうどまん中にいた趙司晨の顔の上に唾(つばき)がはねかかった。この一言に皆の者はぞっとした。だが阿Qは一向平気であたりを見廻し、たちまち右手をあげて、折柄(おりから)頸(くび)を延して聴き惚れている王※[#「髟/胡」、157-4]のぼんのくぼを目蒐(めが)けて、打ちおろした。
「ぴしゃり!」
 王※[#「髟/胡」、157-6]は驚いて跳び上り稲妻のような速力で頸を縮めた。見ていた人達は気味悪くもあり、おかしくもあった。それからというものは王※[#「髟/胡」、157-7]の馬鹿野郎、ずいぶん長い間、阿Qの側(そば)へは近寄らなかった。ほかの人達もまた同じようであった。
 阿Qはこの時、未荘の人の眼の中の見当では、趙太爺以上には見えないが、たいていおつかつの偉さくらいに思われていたといっても、さしたる語弊はなかろう。
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 楼主| 发表于 2005-9-6 09:49:36 | 显示全部楼层
 そうこうする中(うち)にこの阿Qの評判は、たちまち未荘の女部屋の奥に伝わった。未荘では錢趙両家だけが大家(たいけ)で、その他はたいてい奥行が浅かった。けれども女部屋はつまり女部屋であるから一つの不思議と言ってもいい。女どもは寄るとさわるときっとその話をした。鄒七嫂が阿Qの処から買った一枚のお納戸絹(なんどぎぬ)の袴は古いには違いないが、たった九十仙だった。趙白眼の母親も――一説には趙司晨の母親だということだが、それはどうかしらん――彼女もまた一枚の子供用の真赤な瓦斯織(がすおり)の単衣物(ひとえもの)を買ったが、まだちょっと手を通したばかりの物がたった三百大銭(だいせん)の九二串(さし)であった。
 そこで彼等は眼を皿のようにして阿Qを見た。絹袴が無い時には、絹袴の出物は無いかと彼に訊(たず)ねてみたく思った。瓦斯織の単衣(ひとえ)がほしい時には、瓦斯織の単衣の出物は無いかと彼に訊ねてみたく思った。今度は阿Qを見ても逃げ込まないで、かえって阿Qのあとを追馳(おいか)けて、袖を引止めた。
「阿Q、お前はもっと外(ほか)に絹袴を持っているだろう。え、無いって。わたしは単衣物もほしいんだよ。あるだろう」
 あとではこの様なことが、端近い女部屋から終(つい)に奥深い女部屋に伝わった。鄒七嫂は嬉しさの余り彼の絹袴を趙太太(ちょうたいたい)の処へ持って行ってお目利きをねがった。趙太太はまたこれを趙太爺に告げて一時すこぶる真面目になって話をしたので、趙太爺は晩餐の卓上秀才太爺(息子)と討論した。阿Qは全くどうも少し怪しい。われわれの戸締もこれから注意しなければならんが、しかし彼の品物で、まだ買ってやっていいようなものがあるかもしれないと想った。殊に趙太太は直段(ねだん)が安くて品物がいい皮の袖無しが欲しいと思っていた時だから、遂に家族は決議して鄒七嫂にたのんで阿Qをすぐに喚んで来いと言った。かつこれがために第三の例外をひらいてこの晩特にしばらく燈(あかり)をつけることを許された。
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