富人超生

中国で、いわゆる「一人っ子政策」が実施されていることはご承知のとおり、「超生」とはこの規定を超えて、２人以上の子供を持つことを指す。「超生」自体は以前から存在したが、近年社会が急速に豊かになり、「超生」をめぐる新たな問題が表面化してきた。それが「富人超生」と呼ばれる現象だ。

「一人っ子政策」は近年。一部で緩和の動きも伝えられるが、原則的には全国で有効な政策である。違反した場合には、親に対して「社会扶養金」と言う名の罰金が科せられることになっている。

かつて「超生」の多くは農村部の問題だった。貧しい農村部では働き手や「家」の跡継ぎとして、どうしても男子が欲しい。そのために国の指導に違反してでも２人目、３人目の子供を持つ例が絶えなかった。一方。都市部では出生状況の管理や指導がしやすい上、一般に年収の２～３倍という高額の罰金の効果もあって、「超生」が大きな問題になることは少なかった。

しかし近年、都市部では巨大の収入や資産を持つ富裕層が増え、「新貴族」と呼ばれる階層が誕生。当時に「多子多富（子だくさん福をもたらす）」という伝統的な価値観を実験したいという欲求が強まり始めた。

こうした階層にとって「たくさんの子供を持つ」という幸福の代価としては、罰金の負担はさほど大きな意味を持たない。本来、罰金とはあくまで刑罰の一種であって、「この金額を払えばやってもよい」という許可証ではない。しかし、社会の貧富の差があまりに拡大してしまったために、富裕層にとっては罰金の制度が政府による一種の「出産許可証」と化してしまっているのだ。

新聞の報道によると、「超生」の罰金として湖南省のある炭鉱のオーナーが１３０万元、浙江省瑞安市のある企業オーナーが６８万元を徴収されたといったニュースが伝えられている、しかし一定規模の会社のオーナーにとって日本円で１０００万円程度は負担できない金額ではなかろう。これは想像だが、中国社会の風土から考えて「俺は子どものためにこんな金を使ったんだぞ」というのは、一種の面子（メンツ）として自慢の種になるぐらいがオチだろう。

罰金以外にも、子供を２人以上持つ方法というのは会って、たとえば妻を海外に居住させてパスポートを取得し、にわか外国籍になって政策の適用を逃れるというのが古典的なパターン。

また、1人目の子供が先天的な障害を持っている間合いには第２子の出産が認められるという条項があることを利用、医者に金をつかませて証明書を出させ、「合法的」に第２子を生むという方法も横行している。最近では、夫婦間の精子と卵子で人工授精した後、代理母の体内を借りて出産させるというハイテク「偽装出産」まであるそうだ。

いずれにしても多額の金がかかることには変わりなく、「富人超生」の一種には違いない。こんな時代に来るとは、70年代末、「一人っ子政策」がり立案されたときには誰も想像すらしなかっただろう。

庶民は子どもを1人しか持てないが、金持ちは何人でも持てる。万人は法の下に平等であるはずなのに、現実にはそうではない。「富人超生」の背後には貧富の格差がますます拡大する今の中国が抱える難題が凝縮されている。

（中国語ジャーナル）から