論文とは、論証の文章である。はっきりとした主張とそれを支える根拠を述べ、反対の主張が成立しないことを論証する文章である。
したがって、論文では主張と根拠がポイントになる。
I. 主張
主張は、主題に自分の考えを加味したものともいえる。しかし自分もそう考えるからといって他人の主張(論文)を要約したり、反復したりしてはいけない。論文の主張には、書き手自身の独創性が含まれていなければならない。
主張は大きく三つに分類できる。
1. 事実についての主張
これは、過去または現在の実際に起こった出来事(事件)を事実として主張することである。「幽霊が実際に現れて、それを目撃したから事実である」という類の主張である。
2. 価値についての主張
これは、ある制度、生き方、事実の解釈の仕方など、それらの価値判断にもとづいた意見についての主張である。たとえば、「脳死は人間の死として認めるべきである」といったものである。
3. 政策などについての主張
これは将来の行動・動作・計画の提案についての主張である。たとえば、「言論の自由を保障するために法律を制定せよ」といったものである。
II. 根拠
主張があっても、それが独断的であっては論文とはいえない。論文には、だれにも理解しうる合理的な方法で、根拠づけられていなければならない。またその結果として、反対の立場の主張が成立しない(しにくい)ことを論証して、相手を説得することが論文の使命であるともいえよう。
III. 論文の形式と書き方のポイント
論文には次のような要素がある。
o 論文の題名
o 執筆者名
o 序・緒言(小論文では省いてよい)
o 目次(小論文では省いてよい)
o 要約(小論文では省いてよい)
o 序論
o 本論
o 結論
o 注
o 参考文献
ここでは、「序論」から「参考文献」までについて説明する。
序論
まず問題設定からはいり、特定の主題に対して、どのような角度から、どのような方法で論じていくかを記述して、読み手を誘導する。最初から結論を持ち出しては、論文では説得力をもたない。読み手の関心を引く問題設定、なぜそれを問題にしなければならないのか、どのような方法で処理するのか、注目すべき事実への言及などを簡潔に述べることがポイントになる。
本論
本論では、主張の提示・論拠の提示・調査資料や文献など論証材料の提示・対立する主張(反対論)の提示と反証などが行われる。ここでは問題設定を受けて展開される論理の筋道を自分で明確に意識したうえで、順序よく丁寧に合理的に根拠づけていけるかどうかがポイントになる。
合理的な根拠づけの条件とは、論理的であることと、それが実証可能であることである。信頼できる資料(統計や文献・調査収集データ)を豊富に準備し、反対論を引用してそれに対する反証を加えるなどして必要なだけの論証を根気よく積み重ねていくことが論文の要である。
結論
最後に全体の要旨を簡潔にまとめ、論証の積み重ねの結果導き出された結論をはっきりと記述する。
注
注があれば記述する。注は二つに大別される。
補足としての注。本文中に記述すると、文章が煩雑になったり論証が脇道にそれたりするような場合に用いる。傍証・補遺として使えるような資料のある場合に注を利用する。
引用資料の典拠を示すための注。著者名・書名・出版社・出版年・ページ数などを記述する。
注は本文末尾につけたり、脚注としたりする。
参考文献
論文を執筆するにあたって、参考にした文献の一覧を掲げる。