曇りがちな休日 上野まで出かけた
目指すはGrand Louvreが持込んだAncient Greeceの文明
一点一点の作品の前足を止め息を静め、じっと見つめる私は周りの誰かとも同様で
繊細で高貴な美を独占しようと入念に観賞した
ガラスケースに入ったヘレニズム時代製作と推測される20センチ大の「ニケ」
果てなく広げた翼、凛々しい顔、精神のある目付き
今にも回りを破壊し、飛出しそうな姿を見つめていると
小さいながら、潜めた威力に
私はふいに後退りした
その中でも私の目当てだった「アルルのヴィーナス」と出会った時
「実は生きているんでしょう?」と口にした
隣の中年女性「ね~」と相槌
圧倒的な美しさに
人間は透明であるべきだと極端な考えに走った
帰りの上野公園は子供連れの家族
犬と散歩する老人
明日をものともぜず満面な笑顔で演奏する大道芸人
ゆうゆうと自分の庭と出張する鳩たち
「人生って不思議なものですね ああ 未来達は人待ち顔して微笑む
人生って嬉しいものですね」と歌う美空ひばりがどこか生きているような気がした
私は大きく呼吸し
人込の中を消え
新たな陸を目指した