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「すみません、あけてください、すみません」
「親父さんの顧問弁護士だって?」
「はい。昔から世話になっている人で、夕べも。」
「夕べ?」
「係長!ホシは!?」
「まだだ。」
「目撃者は?」
「今のところいない。」
「くそ!」
「何で」
「これって」
「雨野真実」
「どうした?」
「俺のところにも、同じものが、同じ人間から届いてます!」
「何?」
「この送り主の、雨野って誰です!?」
「え。。さあ。熊田先生も知らないと言っていました。」
「これは、いつ届いたんですか?」
「昨日の昼間です。このカードと、ナイフだけが入っていました。」
「ナイフ!?」
「ええ。あれです。」
「凶器も宅配で届いたって言うんですか!?」
「はい!」
「どういうことだ」
「よく思い出して下さい!これを送ったやつに心当たりは?」
「そういえば、先生の携帯に頻繁に電話をかけてきた人がいました。」
「誰です?」
「わかりません。ただ、先生も困っている様子でした。」
「確かに、同じ番号から何度もかかってきていました!」
「03、固定電話ですね。最後は公衆電話。午後9時32分!」
「確かにその時間、熊田さんは誰かの電話に出てました!こいつだ!こいつが熊田さん呼び出して殺したんだ!」
「殺された!?熊田さんが?」
「はい。さっき直人から連絡が。夕べ、事務所で刺されて犯人はまだ。あの、お父さん、どうすれば。」「熊田弁護士に届いた宅配便の差出人を調べてみたところ、住所はデタラメ、雨野真実という名前も偽名と思われます。各捜査員は引き続き、凶器のナイフとタロットカードの出所、ガイシャの身辺調査を手分けして洗って下さい。」
「どうして芹沢君と被害者に同じカードが。」
「何でこのカードなんだ。」
「ありがとうございます。伝票番号から、受付た店がわかりました!」
「ちょっと待ってよ、おい」
「弁護士さん!」
「好きなんですよ、聖歌。心が洗われます。」
「私も大好き!まあ私に取っては、子守歌みたいなもんなんですけどね。」
「子守歌?」
「はい。ここ、私の実家なんです。生まれてすぐ両親が亡くなって、ずっと、ここで育ったんです、私。」
「そうだったんですか。」
「しおりお姉ちゃん!」
「みんな元気だった?」
「元気だったよー!」
「名前なんていちいち覚えてないですからね。」
「そうですか。何でもいいです。何か思い出したら連絡下さい。」
「はい。」
「防犯カメラもないし、収穫ゼロか。はい高塚です。はい、分かりました。急行します。タロットカードの出所が分かった」
「係長!いいんですか?本部に詰めてなくて。」
「あー、ちょっと確かめたいことがあってな。」
「中西さん!お久し振りです!」
「すみませんね、突然お邪魔しちゃって。」
「いえいえ。」
「紹介します。部下の芹沢と高塚です。」
「咲田しおりです。」
「これ、お宅のカードですよね。」
「はい。うちのオリジナルですが。」
「実は、このカードがある事件と関係していまして。」
「事件に?」
「ええ。購入者のリストを見せていただけますか?」
「リストはありませんし、買った方のお名前までは。」
「そうですか。」
「あの、タロットカードには、それぞれ意味があるとか。」
「はい。タロットカードには一枚ずつ意味があって、人生における重大な何かを暗示しています。」
「で、このカードの意味は?」
「過去の罪への償いです。」
「過去の罪への償い?」
「はい。審判のカードは、過去の罪を償いと気がきた、という意味で、今まで避けてきたことと向き合うことを暗示しています。」
「避けてきたこと。」
「それで、しおりさん、実は、」
「はい、わかりました。何を見ればいいんですか?」
「何やってるんですか?」
「し!」
「宅配便。」
「宅配便!」
「眼鏡をかけたおじさんが、宅配便で届いた箱の中から、赤い封筒と、このナイフを取り出していました。」
「え」
「それはこの人でしたか?」
「はい。この人が、ナイフを握って、誰かに向けていました。」
「何言ってんだよ!熊田さんは刺された被害者だ!」
「黙ってろ!すみません。このバカは無視して続けて下さい。」
「その人と、もう一人の男の人がもみ合っていました。」
「もう一人の男の人の顔や年恰好は?」
「わかりません。ただ、黒っぽい服を着ていたとしか。」
「サイコメトラー?」
「物に残った残像を読み取ることが出来るんだ。」
「係長、いつからオカルトファンになったんですか?」
「科学的根拠は何もない。ただ、3年前に彼女が読み取った残像から、時効寸前の殺人事件が、解決したことがある。」
「俺は、絶対信じませんよ!」
「過去の罪への償いです。」
「過去の罪」
「英雄。。英雄」
「最初にナイフを手にしたのは、被害者です。芹沢直人は、自分の身を守るために、抵抗したに過ぎません。よって、正当防衛による無罪を主張します。」
「審議の結果、無罪とする。」
「大丈夫ですか?」
「だ、誰だんた」
「熊田弁護士の携帯の着信番号を調べたところ、一人の男を発見しました。林邦夫、55歳。この二ヶ月あいだに頻繁に被害者に電話をかけていたのです」
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