現在、企業（特に大企業に多く見られる）が人材を採用する場合、採用基準のひとつとして、最高学府（大学、大学院等）の卒業者である事が条件となっています。しかし、一般社会における会社組織（製造業、サービス業の各職種）の中で仕事を行う上でそのような高度な知識が本当に必要でしょうか。近年の日本の実業界で成功者と呼ばれる実業家（企業家）はその多く（松下電器の松下幸之助氏、ホンダの本田宗一郎氏等）が小･中学校も満足に出ていない人達である事は歴史が証明しています。では何故企業（会社）は最高学府出身者を採用したがるのでしょうか。日本が高度経済成長期（1960年から1980年代）に於いて、その成長の基盤と成ったのは、鉄鋼業を初めとする造船、繊維等の製造業でした。そしてその基幹産業を支えたのは大企業の下請業者である中、小企業でした。その中･小企業の中核を担ったのが当時の6･3･3制（小･中･高）の教育制度によって教育された大多数の義務教育終了者だったのです。彼等（中等教育終了者）は、大量生産現場に於いて、均質な知識と能力（皆が同じ様な考えで行動すること）を駆使し、皆が等しく豊かに成ることを目標に、国民的資質である勤勉さを発揮して懸命に働きました。そしてその結果として、日本の高度経済成長は達成されたのです。

日本は現在、経済の成熟期を迎え、今後発展する産業は第3次産業と呼ばれるサービス業（特に高度知識集約型産業と言われる金融業、ハイテク産業等）であると考えられています。その結果、企業経営者はこれからの産業界で必要とされる人材は全て高学歴取得者であると考えているのです。それでは、ここ中国を初めとする新興国が今後歩むべき道はどの様なものでしょうか。それは過去に日本や韓国が歩んできたような工業製品（自動車、家電、消費材等）の大量生産国（俗に世界の工場と言われる）に成る事ではないかと思います。従って、その様な国（産業界）で必要とされる人材に求められる資質は次の様なものであると思います。

①勤勉さ②実直さ③協調性これら３点は、すべての産業で働く人材に求められる最も重要且つ、基本的資質であると思います。と同時に、働く本人にとって与えられる仕事にどれほど興味を持っているか、又、職場環境（企業文化）がどれほど快適なものであるかと言うことが長期的な観点から見て、人材の能力開発には必要不可欠であると思います。高学歴者が必ずしも優秀な人材であると言う保証はありません。以上種々お話しして参りましたが企業の人材採用担当者の皆様には、人は無限の可能性を秘めた、企業にとって最も重要で貴重な資源であるということを念頭に置き、採用しようとする人材が配置を必要とする職場に真に適した人材であるかどうか（適材適所）という事を常に考えることが最も重要なことではないかと思います。