昔、二羽の雁と蛙が湖のそばで仲良く暮らしていた。ところが湖の水がだんだん干上がってきたので、雁は何処か水のある処に飛んで行きたいと思った。
だが蛙は空を飛べないから其処に残らなければならない。雁と蛙は「どうしよう」と相談した。蛙が「いいことがある、お前さんたち二羽で一本の棒の両端をくわえ、俺が棒の真ん中をくわえて一緒に飛び、水のある処を探すことにしよう」と言った。雁も「それはいい考えだ」と賛成したので、二羽の雁と蛙はすぐそうして空に飛び上がった。
人がこれを見て「アッ、雁が蛙を連れて飛んで行く。うまく考えたなあ!」と感心した。これを聞いた蛙は“本当は俺が考えたのだ”と心で思っていた。またしばらく行くと大勢の人が集まって来て空を見上げ、「アッ、雁が蛙を連れて飛んで行く、うまく考えたなあ!」と言った。蛙はまたそれを聞くと、もう少しで「これは俺が考えたのだ」と言いそうになった。
またしばらく行くと、さっきより、もっと、もっと大勢の人が空を見上げて一斉に「アッ、雁が蛙を連れて飛んで行く、うまく考えたなあ!」とはやしたてた。蛙はそれを聞くと、もう我慢できず大声で「本当はこの俺が考えたんだあ!」と叫んでしまった。そのとたん、蛙はくわえていた棒から地面に落ちて死んでしまった。