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悪霊シリーズ第2巻 悪霊がホントにいっぱい
作者:    出处:    发表时间:2007-09-20    浏览次数:     

钉蓼丹场贰ⅳ嗓Γ俊
 綾子《あやこ》の声に真砂子が笑みをつくる。
「……もう誰《だれ》もいませんわ。この家には、もう霊はいない……」
 ひとり、ふたり、床に腰をおろす。しばらくは全員でおし黙っていた。疲れきって口をひらく気にもなれない。そのまま、ボーッとすわっている。
「……なんで浄化したの?」
 ポツンと綾子が聞くと、ナルは、
「望みが、かなったから」
「望みぃ?」
「子供を手に入れた」
 ……わかんない。
 あたしはナルをつつく。
「ねぇ、さっきの板は、なに?」
「見たとおりだ。人形」
 ぼーさんが口をはさむ。
「ヒトガタ。
 別名、偶人《ぐうじん》。木人《もくじん》。桐人《とうじん》……か」
 綾子《あやこ》も、
「人の形に切った桐の木を、呪《のろ》う相手に見たてるんでしょ。
 あれは人を呪う方法だと思ってたわ。呪いのワラ人形の原型だもん」
 ナルはウンザリしたふぜいだ。
 へへん、わからないのは素人《しろうと》だけじゃないじゃないか。
「呪術《じゅじゅつ》には必ず、白と黒がある。
 白は人を助け、黒は人を害する。同じ呪法が白と黒を兼ねることは多い」
「それはそうだな。密教の怨敵《おんてき》退散も、両方の意味に使うもんな」
 ぼーさんがしみじみと言う。
 ……ふうん。
「でも、人形《ひとがた》がどうして浄霊《じょうれい》の役にたつの?」
 あたしがナルに聞くと、
「ヒトガタというのは、魂《たましい》の依代《よりしろ》なんだ。依代、わかるか?」「いまいち」
「魂が入る器。
 あのヒトガタを麻衣《まい》に見立てれば、あれは麻衣のかわりになる。
 麻衣に見立てた人形に、わざと病気や災厄《さいやく》を呼び寄せて、これを封じて川に流して清める。これが流し雛《びな》。今のひな祭りの原型」
「へー」
「あのヒトガタは、富子に見立てた。
 女はあれを自分の子供だと思ったんだ。子供を手にいれたと思った。だから浄化した」「ということは、だましたわけ?」
「こら」
「だって、しょせんはニセモノでしょ?」
「ニセモノとは少しちがう。
 
 麻衣のヒトガタに釘を打てば、麻衣が死ぬ。そのていどには本物だよ。
 それでいいんだ。一旦《いったん》浄化されれば、もどってこない。あの世界は、そういう場所なんだから。――わかったか?」
「うん……わかるような、わからないような……」
 ぼーさんが、
「よくヒトガタが作れたな。そのために出て行ったのか?」
「そう。あの女の素性《すじょう》を調べに」
「ヒトガタができた、ということは、調べがついたんだな」
「もちろん。てこずったけどね。
 古い街だからできたことだな。もっと中央のほうだったらアウトだった」
「……で?」
「女は大島ひろ。女の家が取り壊されて、建ったのかこの家なんだ。
 富子は女のひとり娘。この子は、ある日消えてその半年後、池に死体が浮かんだ」
「……さらわれたのでしょうか」
 言って、リンさんはあたしを見る。
 ナルは軽く肩をすくめて、
「さぁ。そうかも。女は……」
「井戸に身を投げて自殺した」
 綾子がわらう。
 ナルがキョトンとする。
「……それはどうだか知らないけど。
 女は、娘が消えて半年後に死んだ。
 要は富子の生没年が、わかればよかったんだ。ヒトガタを作るのに必要だったから」
「ふうん……」
 あたしがつぶやくと同時に、ナルが立ち上がった。黙って居間を出て行く。そのあとをリンさんが追う。ふたりの後ろ姿を見送って、
「ナルが陰陽師《おんみょうじ》だったとはねぇ」
 ぼーさんが、ため息をもらした。
「おんみょうじ、って?」
「陰陽道の使い手。……わからんだろうな、これじゃ」
「わかるもんか」
 ぼーさんが苦笑をひとつ。
「なんとゆーか、まぁ、中国から呪術。日本じゃ古くからあってな、平安時代には陰陽寮という役所まであった。
 ヒトガタを使う呪術の本家は陰陽道。神道《しんとう》でも使うけどな。まぁ、ヒトガタを富子に見立てて、浄霊《じょうれい》するなんて高度なワザは、陰陽師《おんみょうじ》にしかできんだろ」
 ……へぇぇ。
「すごいじゃない。陰陽師なんて」
 綾子のつぶやき。あたしは綾子を振りかえる。
「すごいの?」
「まーね。ちょっとカッコイイわよ、陰陽師って」
 ……ほえー。すごーい。
 虚脱感《きょだつかん》。あたしたちは、長いこと黙ってボンヤリしていた。
 やがてポツポツと立ち上がる。
「げにおそろしきは女の執念、というやつだな」
 ぼーさんがため息まじりに言う。
「あら、それを言うなら、げに深きものは母の愛、よ」
「どうかね。……まあ、いいさ。
 あー、疲れた! もうごめんだ、こんなしんどい事件は」
「言えてるわね」
 そう言って、ひとりふたりとゆっくりと居間を出ていった。
 あたしが玄関ホールに入ると、ナルが電話をしているところだった。
「……いつもどって来られても結構です。終了しました」
 電話を切って、振りかえったナルと眼があった。夜よりも深い眼。
「これで終わったと思う?」
 あたしはナルに聞いた。
 ナルは眼を和《なご》ませる。
「もうだいじょうぶなんじゃない?」
「ふぅん」
 ホールで電話のようすを見まもっていた、ぼーさんが背伸びをして、
「さて、ナルちゃん、引き揚《あ》げる準備をしようか」
「ああ」
「そうだ、ナル?」
 ナルに声をかけたのは綾子だ。
「あんた、真砂子とつきあってるんだって?」
 ナルが一瞬、眉《まゆ》をあげる。
「つきあう?」
「デートしてるんでしょ? 映画を見たり、コンサートに行ったり。
 若いひとはいいわねぇ」
 思いっきり皮肉な口調。
 ……やめなよ、綾子。そういう追及は墓穴《ぼけつ》を掘るだけだぞ。
 ナルが冷たい眼で綾子をにらむ。
「なるほど、僕《ぼく》がいない間に、そういうくだらない話をしていたわけか。
 除霊《じょれい》できなかったわけだ」
 ……ほらね。
「おんなたらし」
「おや、僕が原さんと出かけるのがそんなにショック?」
 ナルは涼《すず》しい顔。
 ……あーあ、こいつはもー、綾子もやめなよ。口じゃナルにはかなわねーって。
「うぬぼれたこと言わないでよね。アタシは子供に興味ないの」
 綾子の精いっぱいの反撃。
「それはよかった。僕もおばさんには興味ないから」
 ニッコリ笑うナル。
 綾子がツンとそっぽを向いて、二階へあがって行った。
 玄関ホールにはいつのまにか、あたしとナルだけになった。
「ナルってば、隠してたんだー」
 あたしはわらって言ってやる。できるだけ、冗談みたいに。
 ……あー、ダメだ。こういうことを言ったって、足元をすくわれるだけなのに。
 でも、ナルはちょっと困《こま》った顔をして視線をそらした。
 へぇぇ、ナルでも困った顔なんて、することあるのかぁ。これはびっくり。
「真砂子が何を言ったか知らないが」
 ナルはそっぽをむいたまま言う。
「そんなのじゃない。――誤解だ」
 そうして、ベースにしていた部屋のほうに歩き始めた。
 ……誤解だ。
 その言葉が、夢の中のナルと重なって、あたしはなんだかおかしかった。
 ……誤解かぁ。
 思わず顔がわらってしまう。
 こういうのってうれしいね。深い意味はないんだろうけどさ。綾子が聞いたときには言い訳なんてしなかったのに、あたしが聞いたら言い訳してくれた。
 うん。しばらくそういうことにしておこう。ナルは、綾子に誤解されるのはかまわないと思った。でも、あたしには誤解されたくなかった、と。
 うーん、ないよなー、そんなこと。でも、いいや。とりあえず、そう思ってうぬぼれておこうっと。人間、明るくなれる材料は大切にしなきゃ。ねー?
 あたしはしばらく、ひとりでクスクスわらっていた。

 あたしたちが機材の整理をしていると、典子《のりこ》さんと礼美《あやみ》ちゃんがホテルから帰ってきた。
 ナルが典子さんに事情を説明する。
 
「本当に、もうだいじょうぶなんでしょうか」
 不安そうな典子さんに、
「心配ないでしょう。気になるのでしたら、家をかわってもかまいませんよ。
 そのほうが安心できるかもしれませんね」
 ナルの言葉に、典子さんが安心したように礼美ちゃんを抱き寄せる。
 礼美ちゃんは、あたしと眼があうとニッコリわらった。
 小さい子独特の、ぴかぴかした笑顔。
 ああ、よかったなぁ……。
「よかったね」
 なんとなく呼びかけた。礼美ちゃんの小さな胸の中で、この事件がどんなふうに整理されるのかはわからないけれど。
 礼美ちゃんがあたしに駆《か》け寄ってきた。いつのまにか顔色が沈みこんでいる。
 ……どうしたの?
 礼美ちゃんが、あたしの手にしがみつく。
「麻衣ちゃん、かえっちゃうの?」
「ん? うん」
「もっと、とまっていけばいいのに」
 礼美ちゃんの子供らしい不満そうな表情。
 ……だいじょうぶだね。もうこんなに元気なんだもん。すぐにこんな事件なんて忘れてしまって、もとの礼美ちゃんにもどるよね。
「いつ、かえるの?」
 聞かれてあたしは、ナルの顔を見る。
「明日《あす》」
「明日、だって」
「こんばんは、とまるの?」
「うん」
「じゃあね、麻衣ちゃん、礼美のおへやにとめてあげるね。
 きにいったら、もっといてもいいのよ」
 典子さんが、耐えかねたようにクスクス笑いだした。あたしもこらえきれずに、笑いだす。
 礼美《あやみ》ちゃんはキョトンとしていた。

 その夜、もう一晩、あたしたちはようすを見るために森下邸に泊《と》まった。あたしは礼美ちゃんのリクエストどおり、礼美ちゃんと典子さんの部屋で眠った。
 ノックも騒音も、何もない、とても静かな夜だった。


エピローグ


 東京、渋谷《しぶや》、道玄坂《どうげんざか》。
 あたしは「渋谷サイキック・リサーチ」のオフィスで、ビデオテープの整理をしている。
『The Case of Morishita』――すなわち、『森下事件』と書いたラベルを、テープに貼《は》って、リンさんがつけたメモを清書していく。
 これは何かなぁ。『Corridor of Ground Floor』……わかんねぇなー。いいや、このまんま写しちゃえ。
 まったくもー。こいつらはどーして横文字を使いたがるのかねー。あたしはだいたい、何かというと横文字をつかいたがる、昨今《さっこん》の風潮には怒りをおぼえるぞ。横文字で書きゃ、かっこいいかと思って。
 ふん。どーせ、あたしは英語が苦手《にがて》だよぉ。
 せっせとビデオの整理をしていたら、ドアが開いた。
 おっと客だ。あわてて笑顔をこさえて、立ち上がる。
 ……なんだ、あんたか。
「よっ」
 ぼーさんが、のんきそうな顔で手をあげる。
 このところ、ひんぱんにやって来るな、こいつ。
「暑いねぇ。麻衣《まい》ちゃん、俺《おれ》、アイスコーヒーがいいなー」
「なんでお客でもない人間に、お茶を出すわけ?
 それともぼーさん、事件の依頼?」
 ぼーさんが情けなさそうな表情をする。
「どーしてここの人間は、そうも冷たいわけなんだ?」
「営業方針」
「なんだ、そりゃ。
 なー、たのむよ。コーヒー。今度、映画でもおごってやるから」
 ごめんこうむり。
 あたしはしかたなく立ち上がった。が。
「麻衣、アタシはアイスティーにして」
 げ。綾子《あやこ》っ。
「なによ、ぼーさん。こんなとこでアブラ売ってていいの?」
「その言葉、そっくりかえしてやるよ」
 あのなー。あんたら、ここを喫茶店がわりにするなよな。
「ナルは?」
 綾子の問いに、あたしは丁寧《ていねい》に答えてやる。
「所長でしたら、所長室で、瞑想《めいそう》中でございますわ」
「あー?」
「なによ、それ」
「知らない、そう本人が言ってるもん。
 なんだか知らないけど、地図を広げてじーっと考えこんでんの。あたしは、旅行の計画を練《ね》ってるだけだと見たね」
「へー」
「でも、あれやってるときにジャマすると大目玉をくらう。
 だから、ナルはあきらめて、お茶飲んで帰れば?」
 綾子はちょっと唇《くちびる》をとがらす。
「なーんだ。
 あたし、アールグレイにしてよね」
 ……へいへい。
 なんちゅー勝手な客だ。おっと、客じゃなかったか。
 キッチンに入ろうとすると、再びドアの開く音。
 ……今度こそお客……なんてこったい。
「あ、こんにちは、です」
「あれー、ジョンじゃない」
「よぉ」
 ま、いいけどね、ジョンなら。
 でも、あたしはいちおう聞いたりする。
「どうしたの、ジョン?」
「近くまで来たんで、よらせてもろたんです」
 ……あー、さよーで。
「お茶いれるけど、何がいい?」
「……すんません。お手間のかからへんもんでかまいませんです」
 ……うんうん。いいねぇ。このひかえめな言い方。見習えよ、ぼーさんに綾子。
 あたしはヤカンをかけて、お茶の準備をする。ポットの用意をしながら、いやーな予感。
 ぼーさんが来て、綾子が来て、おまけにジョンが来た。と。すると、まさか……。
 そこに、所長室のドアが開いて当のナルが出てきた。
「麻衣、お茶……」
 いいかけて、オフィスを見て眼を見開く。
「……何のご用ですか?」
「いやー」
「ちょっとー」
 各々《おのおの》が言い訳を口にするのを冷たくながめる。
「……麻衣、なんなんだ、この騒ぎは」
 
「存じません。ファンクラブなんじゃないの?
 ――お茶、何にする?」
「なんでもいい」
 言って一同を見渡す。
「ここは喫茶店じゃないんだけど?」
「まぁまぁ」
 ぼーさんがにこやかに手を振る。
「堅《かた》いことは言いなさんなって。――旅行に行くんだって?」
「誰《だれ》が?」
「地図をながめているんだろ?
 まさか、本当に瞑想《めいそう》してたわけじゃないよなぁ?」
「そのつもりだったけど、これじゃ不可能だな」
 ため息まじりに言いながらも、ジョンの隣に腰をおろす。
 すぐに、最近出た本がどうとか、論文がどうとか、どこそこの霊能者がどうだとか、プロ同士の会話になってしまった。
 やれやれ。
 あたしは頭をひとつ振って、お茶をいれる。
 まぁいいけど。これでまた仕事をサボれる。あいつらが来てるあいだは、仕事にならないからなぁ。
 トレイにグラスを並べてキッチンを出たとたん、はかったようなタイミングで、再び(正確には四たび)ドアの開く音がした。
 ……まさか。
 全員の視線がドアに集まる。
 ドアをあけて、涼《すず》しげな着物姿の女のコが姿を現した。
 ……ウンザリ。
「なによ、真砂子《まさこ》、何の用?」
「あら、そういう松崎《まつざき》さんこそ」
「アタシは、ちょっと近くまで来たからー」
「あたくしもですわ。こんにちは」
 真砂子がナルにわらいかける。
 とたんにナルがそそくさと立ち上がった。
「……麻衣、僕《ぼく》はちょっと、出てくる」
 ……は?
「あら、お出かけですの?」
「ああ……。ちょっと」
「おともしますわ」
「いや、結構。ごゆっくり」
 ……ひょっとして、ナル、あんた真砂子を避けてない?
 そう言えば……礼美《あやみ》ちゃんの事件でも、綾子が真砂子を呼ぼうと言うのに、ずいぶん反対していたな。
「あら、出るんだったら、アタシもご一緒するわよ」
「いや……」
 ナルは真砂子と綾子を見くらべる。真沙子がちゃっかりナルの腕に手をかけた。
「あたくし、おともしたいわ」
 ねっとりした口調。
 ……こいつはー……。ふん、ナルが他人の言うことなんか聞くもんか。ノーと言ったら絶対にノーの人間なのよ。
 ……が、しかし。
「…………」
 声にならないつぶやきをもらして、ナルはそのまま歩きだした。真沙子の手を振りほどかずに。
 ……がーん。
 真沙子が得意そうな眼であたしたちを振りかえる。
「ごめんあそばせ」

 ……しばらく、全員でぼーぜんとドアをにらんでしまった。
「……なによ、あいつっ!」
 綾子のバ声は、どちらに向けられたものなのかわからない。
 ……なんでよぉ、誤解だって言ったじゃんよー。ナルのうそつきぃ!
 ぼーさんが身を乗りだした。
「なぁ、麻衣? ナルは真沙子になんか弱みでも握《にぎ》られてるのか?」
「弱み? ナルにそんなもん、あると思う?」
「……しかし、弱みを握られてるんじゃなきゃ、いまのは何なんだよ」
 ……そんなこと聞かれてもわかんないよぉ。
「たしかに……」
 ジョンまでが困《こま》ったように首をかしげる。
「麻衣。いつも聞こうと思ってたんだけどさ」
 ぼーさんが声をひそめる。
「ナルって、本当にここの所長なのか?」
「……いまさら、なにを。当然そうだよ」
「オーナーとかいないのか?」
「いないよ」
 ……たぶん。
「なんで?」
 あたしが聞くと、ぼーさんは、
「なんでって、おまえ……。この事務所の家賃、いくらすると思う?」
 綾子もふと、
「そういえば、そうよね、仮にも渋谷でしょ? まだビルは新しいし事務所は広いし……」
「だろ? おまけにあの機材だ。高感度カメラ一台の値段は?」
 ……高い。とほーもなく高い。それは前に聞いて知ってる。
 ジョンがサラッと言う。
「パトロンでもいるのとちがいますか?」
 ……おいっ、おいっ!
「ボク、なんぞ変なことでも言いましたか?」
「……パトロンって、おまえな……」
 ぼーさんの声に、
「けど、欧米やったら、ようあることです。超心理学ゆうのは、まだ理解されてない学問ですから、どこの研究所も後援者がいるのがふつうやと思いますけど。大きな財団が後援してるところかてありますし、博士号や教授職を作ってる財団かて」
「ジョン、……あのな」
「ハイ」
「日本語は気をつけて使え。日本でパトロンつったら、意味が少し違うんだぞ」
「……はぁ?」
 ……あー、びっくりした。
「しかしねそのセンは悪くない」
 ぼーさんが腕を組む。
「ひょっとして、後援者がいてさ、それが真沙子の父親とかな」
「あ、そやったら、原さんの誘《さそ》いは断れませんね」
「だろ?」
 綾子も身を乗り出す。
「こういう可能性もあるんじゃない? ……ナルはじつはおぼっちゃま」
 ……うーむ。
 しばし全員で考えこんだあと、ぼーさんがいきなり立ち上がった。
「ま、それはともかく。綾子はミゴトにふられたわけだ」
「……よけいなお世話よっ!」
「ハラいせにどう? 俺《おれ》とデートしない?」
 ……おちゃらけ坊主《ぼうず》。
「お断りっ。誰《だれ》があんたなんかと」
「オヤオヤ。んじゃ、麻衣? どう?」
 
 ……あたしーっ!?
「コーヒーのお礼に映画でも」
 ……コーヒーのお礼って、これは事務所のもんで、べつにあたしのものじゃ……。
 ん? というように、ぼーさんにうながされて、
「……ぼーさんのおごり?」
「モチロン。森下事件で依頼料が入ったばかりだし、俺《おれ》いま、金持ちだぜ?」
「行く」
 ……行くとも。行ってやるーぅ! ナルのばかー!
 あたしは十五の若いみそらで、青春したいさかりなんだからねっ。それをナルみたいなニブイやつ、待ってられるかぁー!
 おどろいたようにあたしを見上げているジョンと綾子。
「あんたが、ロリコンだったとは知らなかったわ」
と、綾子。
「おや、女の子は若いほうがいいに決まってるじゃねぇか。なー、麻衣ちゃん」
「ねー、ぼーさん」
「若いコのほうがいいんだったら、あんたが真沙子にアタックすれば?
 そしたらアタシが……」
 ……こいつっ。
「俺、見る眼あるから、真沙子より麻衣ちゃんのほうがいいー」
 ……え?
「真沙子より性格いいしー」
 ……うれしいこと言ってくれるじゃない。みどころのあるやつ。
「あー、あたしもぼーさん、けっこうハンサムかなーとか思ったのー」
「お、わかってるねー」
「うん(ハート)」
 綾子はジトッとあたしたちをながめたあと、
「よしっ! ジョン、デートしよ!」
「え??? ボク……ですかぁ?」
「そ。おねーさんがおごったげるっ! さっ!」
 ひきずるようにして綾子がジョンを立たせる。

 ……というわけで。
 本日、以後ご来訪のお客様。もうしわけありませんが、あたしはいません。リンさんに相手をしてもらってくださいませ。なーに、そんなにこわいひとじゃありません。たぶん。
 みょうに気があったりするかもしれません。
 そーゆうことで、……よろしくっ。

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责任编辑:Mashimaro

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