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悪霊シリーズ第2巻 悪霊がホントにいっぱい
作者:    出处:    发表时间:2007-09-20    浏览次数:     

堠`さん。こんなとこでアブラ売ってていいの?」
「その言葉、そっくりかえしてやるよ」
 あのなー。あんたら、ここを喫茶店がわりにするなよな。
「ナルは?」
 綾子の問いに、あたしは丁寧《ていねい》に答えてやる。
「所長でしたら、所長室で、瞑想《めいそう》中でございますわ」
「あー?」
「なによ、それ」
「知らない、そう本人が言ってるもん。
 なんだか知らないけど、地図を広げてじーっと考えこんでんの。あたしは、旅行の計画を練《ね》ってるだけだと見たね」
「へー」
「でも、あれやってるときにジャマすると大目玉をくらう。
 だから、ナルはあきらめて、お茶飲んで帰れば?」
 綾子はちょっと唇《くちびる》をとがらす。
「なーんだ。
 あたし、アールグレイにしてよね」
 ……へいへい。
 なんちゅー勝手な客だ。おっと、客じゃなかったか。
 キッチンに入ろうとすると、再びドアの開く音。
 ……今度こそお客……なんてこったい。
「あ、こんにちは、です」
「あれー、ジョンじゃない」
「よぉ」
 ま、いいけどね、ジョンなら。
 でも、あたしはいちおう聞いたりする。
「どうしたの、ジョン?」
「近くまで来たんで、よらせてもろたんです」
 ……あー、さよーで。
「お茶いれるけど、何がいい?」
「……すんません。お手間のかからへんもんでかまいませんです」
 ……うんうん。いいねぇ。このひかえめな言い方。見習えよ、ぼーさんに綾子。
 あたしはヤカンをかけて、お茶の準備をする。ポットの用意をしながら、いやーな予感。
 ぼーさんが来て、綾子が来て、おまけにジョンが来た。と。すると、まさか……。
 そこに、所長室のドアが開いて当のナルが出てきた。
「麻衣、お茶……」
 いいかけて、オフィスを見て眼を見開く。
「……何のご用ですか?」
「いやー」
「ちょっとー」
 各々《おのおの》が言い訳を口にするのを冷たくながめる。
「……麻衣、なんなんだ、この騒ぎは」
 
「存じません。ファンクラブなんじゃないの?
 ――お茶、何にする?」
「なんでもいい」
 言って一同を見渡す。
「ここは喫茶店じゃないんだけど?」
「まぁまぁ」
 ぼーさんがにこやかに手を振る。
「堅《かた》いことは言いなさんなって。――旅行に行くんだって?」
「誰《だれ》が?」
「地図をながめているんだろ?
 まさか、本当に瞑想《めいそう》してたわけじゃないよなぁ?」
「そのつもりだったけど、これじゃ不可能だな」
 ため息まじりに言いながらも、ジョンの隣に腰をおろす。
 すぐに、最近出た本がどうとか、論文がどうとか、どこそこの霊能者がどうだとか、プロ同士の会話になってしまった。
 やれやれ。
 あたしは頭をひとつ振って、お茶をいれる。
 まぁいいけど。これでまた仕事をサボれる。あいつらが来てるあいだは、仕事にならないからなぁ。
 トレイにグラスを並べてキッチンを出たとたん、はかったようなタイミングで、再び(正確には四たび)ドアの開く音がした。
 ……まさか。
 全員の視線がドアに集まる。
 ドアをあけて、涼《すず》しげな着物姿の女のコが姿を現した。
 ……ウンザリ。
「なによ、真砂子《まさこ》、何の用?」
「あら、そういう松崎《まつざき》さんこそ」
「アタシは、ちょっと近くまで来たからー」
「あたくしもですわ。こんにちは」
 真砂子がナルにわらいかける。
 とたんにナルがそそくさと立ち上がった。
「……麻衣、僕《ぼく》はちょっと、出てくる」
 ……は?
「あら、お出かけですの?」
「ああ……。ちょっと」
「おともしますわ」
「いや、結構。ごゆっくり」
 ……ひょっとして、ナル、あんた真砂子を避けてない?
 そう言えば……礼美《あやみ》ちゃんの事件でも、綾子が真砂子を呼ぼうと言うのに、ずいぶん反対していたな。
「あら、出るんだったら、アタシもご一緒するわよ」
「いや……」
 ナルは真砂子と綾子を見くらべる。真沙子がちゃっかりナルの腕に手をかけた。
「あたくし、おともしたいわ」
 ねっとりした口調。
 ……こいつはー……。ふん、ナルが他人の言うことなんか聞くもんか。ノーと言ったら絶対にノーの人間なのよ。
 ……が、しかし。
「…………」
 声にならないつぶやきをもらして、ナルはそのまま歩きだした。真沙子の手を振りほどかずに。
 ……がーん。
 真沙子が得意そうな眼であたしたちを振りかえる。
「ごめんあそばせ」

 ……しばらく、全員でぼーぜんとドアをにらんでしまった。
「……なによ、あいつっ!」
 綾子のバ声は、どちらに向けられたものなのかわからない。
 ……なんでよぉ、誤解だって言ったじゃんよー。ナルのうそつきぃ!
 ぼーさんが身を乗りだした。
「なぁ、麻衣? ナルは真沙子になんか弱みでも握《にぎ》られてるのか?」
「弱み? ナルにそんなもん、あると思う?」
「……しかし、弱みを握られてるんじゃなきゃ、いまのは何なんだよ」
 ……そんなこと聞かれてもわかんないよぉ。
「たしかに……」
 ジョンまでが困《こま》ったように首をかしげる。
「麻衣。いつも聞こうと思ってたんだけどさ」
 ぼーさんが声をひそめる。
「ナルって、本当にここの所長なのか?」
「……いまさら、なにを。当然そうだよ」
「オーナーとかいないのか?」
「いないよ」
 ……たぶん。
「なんで?」
 あたしが聞くと、ぼーさんは、
「なんでって、おまえ……。この事務所の家賃、いくらすると思う?」
 綾子もふと、
「そういえば、そうよね、仮にも渋谷でしょ? まだビルは新しいし事務所は広いし……」
「だろ? おまけにあの機材だ。高感度カメラ一台の値段は?」
 ……高い。とほーもなく高い。それは前に聞いて知ってる。
 ジョンがサラッと言う。
「パトロンでもいるのとちがいますか?」
 ……おいっ、おいっ!
「ボク、なんぞ変なことでも言いましたか?」
「……パトロンって、おまえな……」
 ぼーさんの声に、
「けど、欧米やったら、ようあることです。超心理学ゆうのは、まだ理解されてない学問ですから、どこの研究所も後援者がいるのがふつうやと思いますけど。大きな財団が後援してるところかてありますし、博士号や教授職を作ってる財団かて」
「ジョン、……あのな」
「ハイ」
「日本語は気をつけて使え。日本でパトロンつったら、意味が少し違うんだぞ」
「……はぁ?」
 ……あー、びっくりした。
「しかしねそのセンは悪くない」
 ぼーさんが腕を組む。
「ひょっとして、後援者がいてさ、それが真沙子の父親とかな」
「あ、そやったら、原さんの誘《さそ》いは断れませんね」
「だろ?」
 綾子も身を乗り出す。
「こういう可能性もあるんじゃない? ……ナルはじつはおぼっちゃま」
 ……うーむ。
 しばし全員で考えこんだあと、ぼーさんがいきなり立ち上がった。
「ま、それはともかく。綾子はミゴトにふられたわけだ」
「……よけいなお世話よっ!」
「ハラいせにどう? 俺《おれ》とデートしない?」
 ……おちゃらけ坊主《ぼうず》。
「お断りっ。誰《だれ》があんたなんかと」
「オヤオヤ。んじゃ、麻衣? どう?」
 
 ……あたしーっ!?
「コーヒーのお礼に映画でも」
 ……コーヒーのお礼って、これは事務所のもんで、べつにあたしのものじゃ……。
 ん? というように、ぼーさんにうながされて、
「……ぼーさんのおごり?」
「モチロン。森下事件で依頼料が入ったばかりだし、俺《おれ》いま、金持ちだぜ?」
「行く」
 ……行くとも。行ってやるーぅ! ナルのばかー!
 あたしは十五の若いみそらで、青春したいさかりなんだからねっ。それをナルみたいなニブイやつ、待ってられるかぁー!
 おどろいたようにあたしを見上げているジョンと綾子。
「あんたが、ロリコンだったとは知らなかったわ」
と、綾子。
「おや、女の子は若いほうがいいに決まってるじゃねぇか。なー、麻衣ちゃん」
「ねー、ぼーさん」
「若いコのほうがいいんだったら、あんたが真沙子にアタックすれば?
 そしたらアタシが……」
 ……こいつっ。
「俺、見る眼あるから、真沙子より麻衣ちゃんのほうがいいー」
 ……え?
「真沙子より性格いいしー」
 ……うれしいこと言ってくれるじゃない。みどころのあるやつ。
「あー、あたしもぼーさん、けっこうハンサムかなーとか思ったのー」
「お、わかってるねー」
「うん(ハート)」
 綾子はジトッとあたしたちをながめたあと、
「よしっ! ジョン、デートしよ!」
「え??? ボク……ですかぁ?」
「そ。おねーさんがおごったげるっ! さっ!」
 ひきずるようにして綾子がジョンを立たせる。

 ……というわけで。
 本日、以後ご来訪のお客様。もうしわけありませんが、あたしはいません。リンさんに相手をしてもらってくださいませ。なーに、そんなにこわいひとじゃありません。たぶん。
 みょうに気があったりするかもしれません。
 そーゆうことで、……よろしくっ。

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责任编辑:Mashimaro

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