蟆筏搜预à小ⅳい铯妞腚懩苷撙颏浃盲皮い搿 「仕事ぉ? 本当にぃ?」 あたしは声に、めいっぱい疑惑をにじませてやった。 「ホント、ホント。だから、アイスコーヒー」 はいはい。しょーがねぇなー、もー。 キッチンに行って、つくりおきのアイスコーヒーをグラスに注いでやる。なんのかんの言いながら、ぼーさん専用のアイスコーヒー(ぼーさんはどんな寒い日でも、絶対アイスだ)が用意してあるところが、我ながらなんとも……。 「にしても、なにごと? そのカッコ」 グラスを置きながら、あたしはぼーさんのハデな格好を上から下までながめた。 「あー、俺《おれ》今日、バイトだったのよ」 「バイトなんてしてんの!」 そーか、本業だけでは食えないのか。だろーな。こいつ、霊能者のわりにはあんまし役にたたないもんなー。 「バイトって、なんの? ハデなカッコじゃない」 「んー」 ぼーさんはそのへんに上着や帽子を脱《ぬ》ぎ散らかす。(あのなー) 「バックバンド」 ほえ? 頭の中が空白になった。 『バック』は……『後ろ』よねぇ。『バンド』は……あの、いわゆる『楽団』の『バンド』? ……ということは……つまり……。 「えぇぇぇーっっっ!!」 バックバンド! 「イベントで急にかり出されたんだけどさー、これがへったくそなアイドルタレントで、まいったのなんの」 「あのぅ、もしもし?」 「あ?」 「バックバンドって……なにするの?」 「なにって……ふつー、新体操したりはしないと思うが?」 いや、まー、そーなんだけど。 「楽器を演奏しちゃうわけ?」 「そだよ」 「……わかった、パーカッションとか言って、木魚《もくぎょ》叩《たた》いたりするんでしょー」 「あのな」 「あ、尺八《しゃくはち》とか?」 ぼーさんは、ウンザリしたように床に置いた黒い大きなケースを指さす。 「ベース」 げげっ! なんだとーぉ!? 「あの……えれきてるで動く、ベース?」 「おまえ……いつの生まれだ? そうだよ、そのベース! 俺は、お嬢ちゃん」 「はい」 「言ったことはないような気がするから、知らなくても無理はないが、本業はベーシストなんだよ、わかる? みゅーじしゃん、とゆーやつだ」 …………。 「スタジオ・ミュージシャン。 自分のバンドも持ってるけどさ、ボーカルがいまいちでなー。ナルちゃんくらい顔のいいボーカルがいりゃ、もうちょっとメジャーなんだがなー」 …………。 ぼーさんが、わかったか? というようにあたしの顔をのぞきこむ。 「それがどーしてっ! 坊主のバイトなんて、やってんのよーっっ!!」 思わず叫んじゃったわよ。ぜいぜい。 「個人の自由だ」 「高野山《こうやさん》にいたんでしょーがっ」 「いたよ。俺んち、寺だから。親父《おやじ》は坊主にしたがったんだけどな。でもさー、お山はベースはモチロン、ウォークマンとか、いっさい持ちこみ不可なんだよ。まぁ、それでお山を降りたわけだな。なっとく?」 「……なっとく……。でも――」 ぼーさんはみなまで言うなと手をふる。 「この業界ってのは、意外に多いんだよ。タタリとか幽霊とか。なんかあるたびに、もと坊主だってんで担《かつ》ぎ出されて、それでなんとなく拝《おが》み屋が副業のようになってるだけ。 ほかに質問は?」 「……ありません」 どひゃー、おどろきー。 「聞いてみるもんだねぇ」 「職業に偏見をもってはいかんぞ。坊主だってロックも聞きゃあ、ディスコだって行く。俺の友達の中には、坊主のくせに産婦人科の医者をやってるやつだっているもんな。本人いわく、『ゆりかごから墓場まで』だとさ」 「……それって、シャレになんないと思う」 「だろ?」 そうやってぼーさんとヨタ話をしていたら、ナルが部屋から出てきた。 「……うるさいと思ったら……」 ロコツに顔をしかめてみせる。まぁ、面白くはないわな。霊能者といえば同業者。同業者といえばライバル。その商売敵《がたき》が自分のオフィスでのんきにお茶なんか飲んで、アルバイトの事務員と雑談なんかしてたら。 でも、ぼーさんはそんなの、ぜーんぜん気にしないのだった。俗に言う、蛙《かえる》の面《つら》に水。 「よー」 なんか言って、手をあげて、ノンキなもんだ。 「今日は仕事の話だそうですわ、所長」 「まさか」 ナルはニベもない。 「本当だって。ちょいとヤッカイな話でさ、ナルちゃんの知恵を借りたいんだが」 ナルがぼーさんの前に腰をおろしたので、あたしはお茶をいれに立った。 「やっかいな話?」 「うん。――麻衣ちゃん、おかわり」 へいへい。
2
「じつは――俺のバンドのおっかけに、都内の高校生がいるんだが……」 「バンド?」 キョトンとしたナルに、ぼーさんはあたしにしたのと同じ話をくりかえす。さすがのナルも、意外なぼーさんの素性《すじょう》に若干驚いたようすだったけど、まぁ、あたしほどマヌケな反応はしなかった。ぼーさんは、ひと通りの説明を終えてから、 「その……ファンの子に、タカっているんだ。高校生なんだが、その子の学校で変なことが起こっているらしいんだよな。詳《くわ》しく話を聞くと、どーも気味の悪い話でさ」 ナルが無言で話をうながす。 「その子が言うには、自分のクラスのある席はたたられているらしいと。 ある席に座《すわ》った者が、ここ三か月くらいの間に相次いで事故にあってるらしいんだな」 「……よくある話だね」 「それがそうとも言えないのさ。事故にあったのは四人なんだが、そのときの状況がまったく同じ」 「……今年日本は、史上最悪の事故数だそうだが?」 「そう来ると思った。 残念ながら、その言葉はあてはまらんぜ。なんせ、交通事故じゃない。ケガをしたのは四人なんだが、全員電車にひきずられたんだ。腕をドアにはさまれて。 九月以来、三回席替えがあって――つまり、その席に座った人間は四人いるんだが、その全員が事故にあってる。ひとりは軽傷ですんだが、三人は大ケガをした。まぁ、死んだ者がいないのがさいわいだが、変だとは思わんか?」 ……げー。 ナルは考えこむようすを見せる。 「それだけじゃない。その子のクラスの担任が、自分の部屋……美術準備室を自室に使っていたんだが、そこに幽霊が出ると言って騒いでいるうちにバッタリ倒れて入院。大量の吐血《とけつ》をくりかえしているんだが、原因は不明」 あたしはたまらず声をはさむ。 「それって変だよ」 「だろう? そこの学校じゃ、そのほかにも変なことが起こっているらしくてさ。怪談だけじゃなくて原因不明の病気やら事故やらまでが山のようにあって、気味が悪いんで何とかならないだろうか、ってその子が言うんだ」 ……ほかにも変なこと……。 あたしはふいにポケットの中のメモ用紙を思いだした。 「ね、ぼーさん。その子の学校って、まさか湯浅《ゆあさ》じゃないよね……?」 ぼーさんはキョトンとする。 「なんで……? 湯浅だ。知ってるのか?」 えーっっ!? ポカンとしたぼーさんとナルに、あたしはあわててメモ用紙をひっぱりだして見せる。 「昨日から三件も依頼があったの! 湯浅高校!」 ぼーさんがメモ用紙をひったくる。 「この依頼は……」 「ナルは断《ことわ》っちゃった。でも、気になるからぼーさんかジョンに頼めないかと思って、連絡先だけ聞いといたの」 「この、伊東清美《いとうきよみ》って子は?」 「友達がコックリさんを見てて、キツネに憑《つ》かれちゃったんだって。次の三浦聡子《みうらさとこ》さんは、肝《きも》だめしをしてから幽霊がついてくるようになったって。もうひとつの、久我山《くがやま》みのりさんは、クラブの部室にポルターガイストが起こるって」 「……どうなってんだ?」 ぼーさんがうめく。 変だ。ひとつの学校にこんなに集中して。しかもこんな短期間に。 「こりゃあ、ただ事じゃないぜ」 ナルの返答はない。じっと宙をにらんでる。 「ナルちゃん、どうする? 無視するか?」 ナルは少し考えて、 「……その子たちに連絡を取ってみよう」 そうこなくっちゃ! あたしは電話をかけようと立ち上がった。そのときだ。お客が入って来たのは、 「あのう……」 それは初老の紳士っぽい人だった。 とりつぎに立ったあたしに、オジサンは名刺を差しだした。 『私立湯浅《ゆあさ》高校 校長 三上昇《みかみのぼる》』 「じつはうちの学校で、どうも変なことが起こっているらしくて、その調査を依頼できないかと思いまして」 校長の言葉に、あたしたちは思わず顔を見あわせた。
3
私立湯浅高校。 ここでなにかが怒っている。なにかとても奇妙なことが。
翌日の月曜日、あたしたちは湯浅高校に向かった。本格的な調査の前に、ひととおり関係者の話を聞くために。 あたしとナルが学内へ。リンさんは(本名不詳《ふしょう》、年齢不詳なるも二十代終わりと推定される、ナルの助手)は学校の周囲の住人に聞きこみを行う。――変なウワサはたってないか、変なことを目撃していないか。 別口で依頼を受けたぼーさんもいっしょで、だから今回は『渋谷サイキック・リサーチ』+ぼーさん、という、いわば変則チーム。 高校自体はごく普通の学校だった。古くもなく新しくもない校舎。狭《せま》すぎず、広すぎずの敷地。敷地に隣接して、学生会館と銘《めい》打った多目的ホールがあったらしいけど、それは老朽化《ろうきゅうか》のため、現在取り壊《こわ》して建《た》て直しの工事中。 あたしたちが学校に足を踏《ふ》み入れたのは、ちょうど授業終了直前で、グラウンドでは体育の授業中の学生がソフトボールをしていた。 学生を見ながら校長室に向かう。校長室では三上《みかみ》校長が待っていた。 ナルがあたしとぼーさんをあらためて校長に紹介する。と、いっても、あたしについては『助手です』で終わりだったけど。 「ご足労さまです。よろしくおねがいします」 言って、校長は室内にいた中年の先生を紹介してくれた。 「生活指導の吉野《よしの》くん。彼が学内を案内してくれます。ほかにも何かご用があれば、何でも言いつけてください」 吉野先生が軽く会釈《えしゃく》をする。顔色の悪い、神経質そうな先生だった。 「とにかく、病気や事故が多くて、教職員の五分の一近くが倒《たお》れまして、授業にもさしつかえるありさまです。生徒も同様で……。それでか、妙《みょう》なウワサも流れていまして、生徒ばかりでなく教師まで動揺しているようで、収拾がつきません。 ――まあ、それは私などから申しあげるよりも、直接当事者からお聞きになったほうがいいでしょう。 部屋をひと部屋、用意してほしいとのことでしたので、小会議室を用意してあります。必要なものがありましたら、気軽に言ってください」 例によって調査拠点――ベースとして使われることになる部屋。 「生徒、教員たちには、相談のある者は本日の放課後以後、会議室まで出向くように言ってあります。どれほどの人数があつまるかは不明ですが。 学内は自由に調べていただいてけっこうです。できるだけの便宜《べんぎ》ははかりますので、早く学内が落ちつくよう、ひとつよろしくお願いします」 ナルが軽く頭を下げる。 「そうさせていただきます」
校長室を退出してから、まずは吉野先生に学内をざっと案内してもらって、建物の位置を確認する。それからベースとして用意してもらった小会議室に向かった。 「こっちです」 吉野先生が示す。先に建って歩きながら、ぼーさんに、 「あなたがリーダーですか?」 と聞いてきた。 「いやいや。リーダーはむしろこっち」 ぼーさんがナルを指さす。 ほほう、ぼーさん、ようやくわかってきたな。 吉野先生は値踏みするようにナルを見る。不安そうな表情を浮かべてから、 「じつは……わたしも、相談したいことがあるんですが……」 ……い、いきなり。 ナルは静かな視線を先生にむけてから、うなずいた。 「お聞きします。……ここですか?」 ドアを示す。ドアの上には「小会議室-一」の札が下がっていた。 「……そうです」 言って吉野先生はドアを開いた。
わりと広めの室内に、大きなテーブルがひとつ。ホワイト・ボードと小さな棚《たな》。それで全部のガランとした部屋だ。(会議室だから当然なんだけどね) ナルは室内を見渡してうなずく。 吉野先生にかけるようすすめてから、 「ご相談の内容をうかがいます」 言ってファイルを広げた。吉野先生は少し不安げにあたしたちを見くらべる。 「……あの、わたしが相談をしたことは……」 ナルがうなずいた。 「依頼人のプライバシーは守ります。先生がお望みでしたら、相談内容はもちろん、相談があったことも伏せておきます。 ――どうぞ」 吉野先生はうなずく。額《ひたい》にうっすらと汗が浮かんだ。 「あの……ですね。夜、ノックの音が聞こえるんです」 「それはご自宅ですか?」 「はぁ、最初は自宅でした。 小さな音ですが、しつこいので眠っていても目を覚《さ》ましてしまうんです。だいたい、窓やドアを叩《たた》いていまして……。それで、開けると……」 吉野先生は言いよどむ。ナルは無言で先をうながした。 「誰《だれ》も……いないといいますか、そのう、ドアの枠《わく》の隅にですね、手があるだけなんです。女の手みたいな、白い細い手が、すっとひっこんで、それきりです。 最初は眼の錯覚《さっかく》かと思いまして。でも、翌日もまたノックが始まって……」 「ノックだけですか?」 ナルはメモをとりながら聞く。 「はい。ノックだけです。 気味が悪くてたまらなくて。あまりに続くので一時は家に帰る気がしなくて、夜は出歩くようにしていたんですが、どこにいても同じなんです。居酒屋《いざかや》にいても、やはり十二時を過ぎたころになると、近くでノックの音がするんです。 それは、ドアや窓をあけないと朝までえんえんノックを続けます。……最近は満足に眠ることもできなくて」 どうりで。吉野先生は眼の下に隈《くま》をつくっている。 ナルはうなずく。 「……なるほど。その音は、先生以外の人間にも聞こえますか?」 「はい。でも、わたしほど気にならないようです」 そうですか、とつぶやいて、ナルはぼーさんをちょっとふりかえって、 「ぼーさん、呪符《じゅふ》を作ってくれ」 声をかけてから、吉野先生に向き直る。 「悪霊封じの呪符をお渡ししておきます。これを窓とドアに張って、絶対にあけないように。夜の一人歩きはひかえてください。ノックは続くかもしれませんが、お気になさらず。……その間に調査します」 「……はい」 ぼーさんは硯《すずり》を出して、呪符を書く。それを受け取って吉野先生は、薄くなった頭を深々と下げると会議室を出て行った。 その背を見送って、ぼーさんが誰《だれ》にともなく、 「……いきなりだぜ、どうなってるんだ?」 ナルは肩をすくめただけだ。チラと腕時計に眼をやって、 「もう少ししたら、授業が終わる。依頼をしてきた子たちを集めて、彼女たちの話を聞いてみよう。……今日はそれで終わりだろうな」
4
最初に小会議室にやってきたのは、伊東《いとう》さんのグループだ。 友達がキツネに憑《つ》かれたと言ってきた子。全員がいちように緊張した表情だった。 ナルは六人ほどの女の子を座《すわ》らせて、テープレコーダーを用意する。 「もう一度、依頼の内容を確認したいのですが」 ナルが伊東さんに言うと、全員がピリッと緊張した。 「相談の内容は、友達にキツネが憑《つ》いたのじゃないか、そういうことでしたね?」「……はい」 「その子は今日は?」 「もうずっと休んでます。本人は元気なんだけど、お母さんが家から出さないの」 伊東さんは確認するように周囲を見る。まわりにいた友達が首をうなずかせた。 「その子の状態をもう一度聞かせてください」 伊東さんは、オフィスで言ったのと同じ内容をくりかえす。まわりの子が途中で言葉を補足して、オフィスで聞いたのよりは具体的な事情が聞けた。 その子はある日急に、めだって奇妙な行動をとるようになった。変なことをしたり(机に飛び乗る、教室を走りまわる、大声で泣いたり笑ったりする)、変なことを口走ったり(人の悪口や、予言めいたこと。そのほとんどが意味をなさないものらしい)。果ては寒空の下で制服のままプールに飛びこんだり、砂や小石、チョークを飲みこんだり。 「他人に危害を加えたことは?」 「それは、ありません」 「そう。――キツネが憑いた、というふうに考えたのはなぜ?」 「それは……」 伊東さんはまわりの子と顔を見あわせる。誰《だれ》かが、 「だって、本人がそう言ってたもんねぇ」 「うん」 詳《くわ》しく話を聞くと、どうも本人が自分はキツネだと言っていたらしい。 ナルは指先で軽く机を叩《たた》く。 「普通、人がそういう状態になったときは、病気ではないかと疑うものだと思うけど、そうは考えなかった? 神経科の医者に見せたほうがいいのじゃないかとは?」 全員がザワザワとささやきかわす。答えたのは伊東さんだ。 「だって……自分で『わたしはお稲荷《いなり》さんの使いの白ギツネじゃ』って言ってたし。それに、あの子が変になったのって、先月コックリさんの見物をしてからなんです」 「コックリさん……。紙と……なんて言うんだっけ……グラス、杯《さかずき》? それを使うやつ?」 「ううん、あたしたちがやってるのは、エンピツを使うやつです。紙に『あいうえお』って五十音を書いて、エンピツを使うの」 「……なるほど、いちばん簡単なやつ。それを見てからおかしい?」 「はい」 伊東さんはうなずく。表情が曇《くも》った。 「べつに変なことはなかったけど……。コックリさんが帰らなかったとか、誰かがコックリさんを馬鹿《ばか》にしたとか、そういうことはなかったんです。でも、あたしたちが帰るとき」 横にいた子が先をつないで、 「そう。自分で、とり憑《つ》かれた気がするって言ってたんだよね」 「そんなはずないよって言ったのに、肩が重いとか言ってね」 「そうそう。次の日にはもう変だったんだ」 「うん」 口々に言う女の子たち。 「……そう。コックリさんをした場所は?」 「教室。一-三の」 ナルはホワイト・ボードに張った学校の見取り図を見上げる。なにやら考えこむ風情《ふぜい》を見せてから、 「その子の名前と連絡先を書いていってください。よく調べてみます」
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伊東さんのグループの次にやってきたのは久我山《くがやま》みのりさんのグループだった。 会議室に入ってきた久我山さんは、大勢の人間を連《つ》れていた。久我山さんよりも年下っぽい子もいれば、年上っぽい子もいる。 「あなたの依頼は……部室でポルターガイストが起こる、ということだったんですが」 「はい……あの、そうです」 久我山さんは、緊張した顔つきでうなずいた。 彼女の所属する陸上部では、部室で奇妙なことが起こる。ロッカーが倒《たお》れていたり、きちんとしまったはずの備品が床に散乱していたり。 「スターティング・ブロックがバラバラになって散乱していたこともあるんです」 「イタズラだとは思わなかった?」 「思ったよね」 口をはさんだのは、久我山さんより年上っぽい女の子だ。 「ぜったい誰かのイタズラだって。 それで最初は部室の鍵《かぎ》を替えたりしたんだ。それでも鍵には異常はなし。で、現場を捕まえてやろうって、泊《と》まりこんだりもしたんだけど、ゼンゼンかすりもしない」 「そ。あれは絶対、変だって」 その隣《となり》にいた子もうなずく。 「だって、みんなが泊まりこんでさ、ふっと眼を離したスキに、箱の中にあった砲丸《ほうがん》が床に一列に並んでんだもん」 「……なるほど」 ナルは軽くうなずく。 たしかに、ポルターガイストっぽいね。ということは、またあの機材を運びこんで重労働するんでしょーか。やれやれ。 「ポルターガイストが起こるようになった原因に何か心あたりは?」 「べつに……」 久我山さんたちは首をひねる。けっきょく、思い当たることはないようだった。
久我山さんたちが帰って行ったあと、次にやってきたのは三浦聡子《みうらさとこ》さんのグループ。 早くもウンザリしたあたしとぼーさんをヨソに、ナルは根気よく質問を続ける。 「では、……三浦さん?」 「はい」 友達に囲まれて小さくなっていた三浦さんが首をあげた。 「話を聞かせてください。 霊《れい》に憑《つ》かれたらしい、という依頼でしたが」 「はい……あの」 彼女は先月キモダメシをして以来、怪現象に悩まされている。 「体育館に『開《あ》かずの倉庫』があるんです。何年か前に、そこで用務員さんが死んで以来、変なことが起るんで使ってない、っていうウワサの……。単なるうわさですけど、べつに鍵《かぎ》はかかってないんです。もう使ってないだけで。それで……」 隣の女の子が助け舟を出す。 「テストが終わったうちあげに、キモダメシをしようってことになったんだよね」 「うん」 「そこで百物語をして、変なことが起きないかなーとか言って……。そしたらこの子が」 彼女は三浦さんを指さした。 「途中で気分悪くなっちゃって」 「その日は途中でやめて帰ったんですけど、それ以来、変な影が見えるようになって……」 「それをもう少し詳しく」 ナルの声に、 「はい。あの、たとえばお手洗いで手を洗っているでしょ? そうしたら影が見えるんです。鏡がこう……あって、そこにうしろの壁《かべ》が映《うつ》ってて、その壁に変なものの影が見えるんです。変なものというのは、あの……首つりのロープみたいな形なんですけど……」 その影は、どこにでも現《あらわ》れる。気がつくとあたりの壁に映っている。 「もう、気味が悪くて……」 「そう言えばさ」 隣の丸い女の子が口をはさんだ。 「こないだ、エイちゃんが入院したでしょ? あれで気味悪い話聞いたよ」 言ってから、彼女はナルに、 「あ、エイちゃんていうのは、そのときいっしょにキモダメシをやった子なんだけど、いま入院してるんです。胃に穴があいて。 エイちゃん、次の日から元気なかったでしょ? あの日から彼女の机に幽霊が出るようになったんだって」 「うそ……」 「ホント。授業中、突然金縛《かなしば》りにあって、それでどうしようとか思っていると、自分のお腹《なか》のあたりを誰《だれ》かがさわるんだって。で、こう……目線を下げて見ると、机の中から人間の手首が出てて、その手がお腹のあたりをなでまわしてるんだって」 人垣から悲鳴が起こる。 「たいがいすぐに消えるんだけど、あんまし何度も起こるんで気味悪くてたまんないとか思っていたら、胃に穴があいて。昨日お見舞いに行ったら、そう言ってた」 ……う、うえー。 < |