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悪霊シリーズ第4巻 悪霊はひとりぼっち
作者:    出处:    发表时间:2007-09-20    浏览次数:     

全だと思う?」
 ……そうかぁ……。
「……言ってくれれば、よかったのに」
 人形に転嫁《てんか》……振り替えるつもりだったのなら、そう言ってくれれば。
「転嫁は難しい。いくらリンでも全員助かるとは断言できないからな」
「……だって」
 あたし、ナルにひどいことを言った。あやまらなきゃ、いけない。嫌《きら》いなんて言ってゴメン。
 ……ううん。嫌いだ。あたし、ナルなんて嫌い。すこしもあたしのことを安心させてくれないとこ。言ってくれたらよかったのに。せめて、「できるかぎりのことはするから、信じてくれ」って言ってくれたら。何があっても信じていられたのに。安心していられたのに。
「……悪かった」
 え?
 ナルの横顔。とても綺麗《きれい》な。
「ずいぶん酷《ひど》いもの言いをした。すまない」
 ……ナル。
「麻衣はすぐ他人にのめりこむから……。つらかったろう、悪かった」
 …………。
 涙が出そうだ。大声で泣きたい。悲しいのかうれしいのか、自分でもよくわからない。 だから、ありったけの声を張り上げた。
「ずるいっっっ!!」
「……は?」
 キョトンとするナル。
「あたし、あやまろうと思ってたのにっ! 先に言うなんて絶対にずるいっっっ!!」
「あのな……」
「ナルってば、そーやっていっっもオイシイとこばっかとってくっ! ずるーいっっ!」「こら」
「だって、ずるいもんっ」
 ナルはあきれたような顔をする。白い手がのびる。あたしのオデコをピンとはじいた。 そうして微《かす》かに笑うと、事務室のほうへ行ってしまった。あたしはその猫《ねこ》のようにひそやかな足音を、とてもあたたかい思いで聞いていた。

「……焼き捨てて浄化《じょうか》してしまいましょう」
 リンさんが体育館の中に積み上げた人形の山を見つめる。ナルがうなずいた。
 
「そのほうが安全だな。――ぼーさん、頼む」
「あいよ」
 あたしたちが人形を集めている間に、校庭の片隅でぼーさんが護摩《ごま》を積み上げた。その上に人形の山を作る。
 ぼーさんが火を放った。炎《ほのお》はすべてをのみこんで天を焦《こ》がすように見えた。


エピローグ


 まいど、まいど、東京。渋谷《しぶや》。道玄坂《どうげんざか》。
『渋谷サイキック・リサーチ』。そのオフィス。――の下の喫茶店。
 今日は慰労会《いろうかい》なのだ。うちあげと言うか、かつてないほど厳しかった事件のぶじ解決を祝って。
 ええ、いちおう、ナルとリンさんにも声はかけたんですけどね。来るわきゃないよなぁ。あのふたりが。
「今回の、がんばったで賞は麻衣《まい》かな、やっぱり」
 ぼーさんの声に綾子《あやこ》が笑う。
「無謀《むぼう》でしたで賞、のまちがいじゃない?」
「言えてる!」
 冷たい声を出したのは、タカと千秋《ちあき》センパイ。そして、安原《やすはら》さん。
「……あーんな無謀なことをするなんてっ! 麻衣ってばなに考えてるのっ!」
 タカに怒鳴《どな》られ、
「そうそう。もうちょっと自分を大切に……と言うか、身のほどをわきまえて、と言うか……」
 千秋センパイにお小言をくらい、
「ですよね。話を聞いて寿命が縮《ちぢ》みました。あんなことをするとわかってたら、鎖《くさり》でつないどいたのに」
 安原さんにまで言われ。
「……あたしは犬か?」
 言い返してみたら、全員の声。
「そうっ!」
 ……そんな、力をこめて言わなくたって……。
「麻衣ってば、身のほどをわきまえずに、誰《だれ》にでも吠《ほ》えかかるから」
 綾子が言えば、真砂子《まさこ》が、
「あら、逆ですわよ。相手かまわずじゃれかかるんですわ」
「それは、言えてる。よくいるじゃねぇか。泥棒《どろぼう》見ても吠えずに尻尾《しっぽ》ふる、とほーもなく人なつこい犬」
 ぼーさんってばひどい、しくしくしく。
 そういえば、とジョンが安原さんを振り返る。
「……あの一年生の慰霊祭があったんですって?」
 安原さんがうなずいた。
「ええ。全校で。……学校では、彼のタタリだってことになってますから。生徒会の主催でやって……やっと僕《ぼく》も引退できたし」
「そっか、安原少年は三年生のブンザイで生徒会長やってたんだっけか」
 ぼーさんの言葉にちょっと不満気。
「そうですよ。入試のまっただ中なのに、もー。次の生徒会長候補がいなかったから。ま、なんとかなりましたけど」
 あたしは聞いてみる。
「松山《まつやま》……なにか言ってきた?」
 ワビを入れる、とかなんとか。
「なにも。でも、いちおうなにか考えてはいるんじゃないかな。慰霊祭のときもたいしてモンク言わなかったし」
「たいして……ってことは、ちょっとは言ったわけ?」
「言ってたよ。やっぱ、あの年になるとね、そう簡単に変わったりしないよ。なにがあろうとね。大人《おとな》ってそういう生き物だから」
 ……うん。そうかもなぁ。
 ぼーさんがストローの袋を安原さんに飛ばす。
「少年たちは、そういうオトナにならないようにしなさい」
「おや、もう大人のような口ぶりですね」
「老成したミリョクを感じるだろ?」
「そうですね(ハート)」
 あのー、もしもし?
「ハートマークを飛ばすなよ、おめーは」
「うれしいでしょ(ハート)」
 ……うくく。ぼーさん、また安原さんに遊ばれてやんの。
「でも、安原少年、あのあとびびったろ?」
「ああ、呪詛《ずそ》を返すって言われたあと?」
「そ。潔《いさぎよ》いと言ってたけどさー。ここだけの話にしてやるから」
 ぼーさんに言われて安原さんは天井《てんじょう》をにらむ。
「でも、僕、信じてましたから」
「誰《だれ》を?」
 ぼーさんの質問。しんとみんなが安原さんを注目する。
「自分を」
 ……あらあらあら。
「――だってこの若さで死ぬほど悪いこと、した覚えないですから」
 ……ま、そりゃそうでしょうが。
「ここだけの話ですが、何があっても自分だけは助かるはずだという、確信がありました」
「……お前さんは長生きするよ」
「むろん、そのつもりです」
 きっぱり言われてぼーさんが頭をかかえる。
 ま、安原さんのほうが役者が上だわね。
 笑ってると、つんつんと服を引っ張られて、タカが首をかしげている。
「麻衣は?」
「あたし?」
「だからー、最後に除霊に行ったとき。これで死ぬかもと思わなかったの?」
 …………。
 千秋センパイが、
「恐怖感に正義感が打ち勝った、というやつじゃないの?」
 ……あう。
「ちがうと思うな。谷山《たにやま》さんの場合……」
 行ったのは安原さんだ。そして、申しあわせたように全員が、
「何も考えてなかった!」
 ――そうですともっ! あたしはなにも考えてませんでしたよっ! どーせ、身のほどを知りませんよーだっ。
 ぼーさんの感心したような一言。
「ま、この中でいちばん長生きするのは麻衣だな」
「言えてるー」
「だよねー」
 人をサカナにして笑ってればぁ?
 はいはい。どーせあたしは長生きしますよ。
 そうよ、長生きしてやる。核戦争が起ころうが、恐怖の魔王が降ってこようが生き延びて、長生きしてやるっ! 人類が滅亡《めつぼう》してあたしひとりが生き残ったら、労せずして地球の支配者よっ! 夕陽を背に高笑いしてやるわ。
 谷山麻衣、十六歳。カンが当たろうとどーしようと、あいかわらず地位の向上しない、薄幸の少女であった。
 ……ってか。
 ちぇっ。

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责任编辑:Mashimaro

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