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悪霊シリーズ第6巻 悪霊とよばないで
作者:    出处:    发表时间:2007-09-20    浏览次数:     

だからー。
「だいじょうぶですよ。疲れたら滝川《たきがわ》さんがおぶってくれますからね」
 げっ、とぼーさんが声をあげる。
「こらこら。誰《だれ》がだ」
「いやー、沖縄から能登《のと》まで、たいへんだったなー」
「有意義だったんだろ?」
 安原さんはよろり、とショックを受けたポーズ。
「ひどいっ。あたしノリオのために飛んできたのにっ」
「誰が、あたし、だっ」
「けなげな恋心をじゃけんにするなんてっ」
「お前はなー」
 安原さんは両手を胸に当てる。
「恋だと思うの。ほら、こんなに胸が苦しい」
「こら」
「締めつけられるようで、しかもかゆくてたまんないの」
 か、かゆい?
「おまけに汗くさくてー。……ってこれはコルセットのせいか」
 コルセットのせいですっ。
 バカ笑いしているあたしたちを、ナルは呆《あき》れた顔で見てたけど。
 ……顔はいいんだけどなぁ。
 あたしは内心溜《た》め息《いき》をつく。麦茶でも沸《わ》かしに行こうと廊下に出ると、真砂子《まさこ》があとを追ってきた。
「手伝いますわよ」
「あ、ありがと」
 あたしと真砂子はすっかりなれ合ってしまってるんだな、実は。ふたりして給湯室に行って、共同のヤカンを火にかけて。
「安原さんも人がいいんだから……」
 真砂子が言う。
「だよね」
「滝川さんも、ブラウンさんも、ナルのせいで迷惑《めいわく》したんだから、少しは怒ればよろしいのに、少しも責《せ》めないんですものねぇ」
「まったくねぇ」
 誰《だれ》ひとり、目を覚ましたナルを責めなかった。少なくともぼーさんとジョンは責める資格があるんじゃないかと思ったんだけど、やっぱり一言も責めれる言葉は口にしなかった。
「本当にあたくし、あのお三方の誰かにすればよかったと思いますわよ」
「ほんとに」
「あんなわがまま勝手に情けのない振る舞いをしておいて、ナルも少しはもうしわけなさそうにすればよろしいのに」
「だよねぇ。……でもさー、ナル、謝《あやま》ったらしいよ」
 真砂子はあたしを見る。
「本当?」
「ホント。昨日ぼーさんに聞いて、目を覚まして、いちばんに謝ったらしいよ」
 真砂子は手でもてあそんでいた茶碗を思いっきり乱暴に置く。
「あたくし、ナルのそういうところが嫌《いや》ですのっ」
「まー、謝らないよりはいいからさー」
「それですわよ。あれで謝らなければ単に性格の悪いヤツですみますわよ。あたくしだって、こんな人、と思って見捨てることもできますのっ。それを妙なところで潔《いさぎよ》いすんですものっっ」
 あたしはしみじみうなずいた。
「それは、言えてる。単に性格が悪いよりも、手におえないよな」
「でしょう? あの洞窟《どうくつ》でだって、ナルはさんざんなことをするから、あたくし密《ひそ》かに見捨ててやるって決心してましたのよ。それをナルってば、倒《たお》れたりするんですものっ。それで本気で腹《はら》をたてるなんてできるとお思い?」「……たしかに、あたしも、思った」
「卑怯《ひきょう》だと思いますの。好きでばっかりもいられないし、嫌《きら》いにもなれないし」
「うんうん。いい奴《やつ》か悪い奴か、はっきりしてほしいよな」
「ですわよ。好きになるのは馬鹿《ばか》みたいな気がしすまのに、嫌いになるのはもったいない気がしてしまうところが嫌《いや》ですのっ」
 ……うーむ。言えてる。
 しかし、こうしてお湯が沸くのを見ながらボソボソ人に聞かれたくない話をするあたり、まるでOLのようだねぇ。
 ヤカンを見ながらあたしと真砂子は仲よく溜《た》め息《いき》をついた。
「……よりによって、ナルでなくてもよろしいのに」
「……まったく」
 毎日こうやって真砂子とナルの悪口を言って、それで最後に出る結論がつねに同じってのがちょっくら情けないものがあるよな。
「そう思うのに諦《あきら》めることはできないんですのよね。どうしても、期待してしまうし……」
「アレじゃない? ホレた弱み……。ああ、ナルの奥さんになるなんて人がいたら顔を見てみたいよね」
 きっと神々《こうごう》しいばかりに温和《おんわ》な人にちがいない。
「あたくしの顔でよければいくらでもどうぞ」
「ほう。キミはナルと結婚したいなどという野心を抱いておるのかね」
「あら、麻衣はそう思ってませんの?」
「あたしはそんな先のことは考えてない。とりあえず、デートできるといいなぁ、なんて」
「あたくし、デートならいたしましたし」
 こ、こいつっ。
「それを言うならあたしは、休み中ナルとオフィスで一緒だしー」
「リンさんがいますでしょ」
「常にいるとはかぎらない」
 真砂子があたしをにらみつける。
「麻衣。……抜け駆けはなしですわよ」
「んじゃ、ナルの弱みを教えてくれる?」
「教えません」
「じゃ、あたしもそんな協定には応じられないなっ。そもそもレンアイに卑怯《ひきょう》な手管《てくだ》はつきものさっ」
「どうぞ。そうやって麻衣が卑怯な手を使っている間に、あたくしはいいこにしてますの。いびってくださってもいいんですのよ」
「王子さまが選ぶのはシンデレラってか?」
「普遍の真理ですわ」
「王子の性格に対する認識が甘い」
 真砂子はちょっとひるむ。
「……そうですわね」
「でしょ?」
 結局バカみたいに笑いころげてしまったあたしたちだった。

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责任编辑:Mashimaro

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