５１．「～前に・～あとで・～てから」

●時間の前後関係を表す「～前に」｢～あとで｣「～てから」

時間の前後関係を表す「～前に」｢～あとで｣「～てから」節を持つ文は次のようになります。

　　　　　　　　　　　　　　　　前に、　　　　　　　　　　　　　　　　　

           　　前文                    あとで、　　　　後文　　　(文末)　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　従属節　　　　　　　 てから、　　　　主節　

●「～前に」　

「～前」は空間と時間の位置を示します。

　（１）銀行の前にコンビニがある。（空間）　

　（２）食事の前に手を洗ってください。　（時間）

ここでは時間を表す「～前に」を取り上げます。

「前に」の前には「名詞＋の」が来る場合と、動詞の辞書形が来る場合があります。

１）「名詞＋の＋前に」

「食事の前に散歩する」「仕事の前にメールをチェックする」のように「名詞＋の」が主節より遅く起こることを表します。この場合の名詞は動作を表すものが多いです。

２）「動詞の辞書形＋前に」

「～とき、～」と同じく、従属節「動詞の辞書形＋前に」の中の主語は「が」をとります。主節の主語は「は・が」の規則に従って、「は」をとったり「が」をとったりします。

　（３）田中さんが来る前に、私は部屋を掃除しておきたい。

また、文全体のテンス（非過去か過去か）は主節末のテンスによって決まります。

　（４）田中さんが来る前に、食事の準備をする。

　（５）田中さんが来る前に、食事の準備をした。

（４）は「準備をする（非過去）」、（５）は「準備をした（過去）」となっていますが、従属節は辞書形のままです。学習者は（５）のように主節が過去になると、「～た前に」（「田中さんが来た前に」）としたがる傾向があるので注意が必要です。

３）「～前」のうしろの助詞

　初級レベルでは「～前に」で指導することが多いですが、「前」のうしろにいろいろな助詞をとって、文の要素になります。

　（６）地震が来る前から心配している。

　（７）旅行の前の準備で忙しい。

　（８）合格発表の前は、胸がドキドキした。

（８）のように「は」が用いられると、合格発表の前とあとが対比的に示されます。

●「～あとで」　

「～あと」も「～前」と同じく空間と時間の位置を示します。

　（９）子供はいつも母親のあとを追いかける。　（空間）

　（10）食事のあとでアイスクリームを食べよう。（時間）

ここでは時間を表す「～あとで」を取り上げます。

「あとで」の前には「名詞＋の」が来る場合と、動詞のタ形が来る場合があります。

１）「名詞＋の＋あとで」

「仕事のあとで風呂に入る」「授業のあとで私の部屋に来てください」のように「名詞＋の」が主節より早く起こることを表します。この場合の名詞も「～前に」同様、動作を表すものが多いです。

２）「動詞のタ形＋あとで」

「名詞のあとで」と同じく、「～た」の事柄（行為）が主節より早く起こることを表します。

従属節「動詞のタ形＋あとで」の中の主語は「が」をとります。

　(11)　仕事が終わったあとで、バトミントンをやりませんか。

また、「～前に」同様、文全体のテンス（非過去か過去か）は主節末のテンスによって決まります。

　(12)　就職したあとで、結婚する。

　(13)　就職したあとで、結婚した。

学習者は（12）のように主節が非過去のとき、「～るあとで」（「就職するあとで」）とする傾向があります。

　(12)’？就職するあとで、結婚する。

３）「あと」のうしろの助詞

「あと」はうしろにいろいろな助詞をとって、文の要素になります。

　(14)子供が巣立ったあとは、夫婦の二人暮しだ。

　(15)手術のあとの養生が大切だ。

　(16)私が発音するあとから、ついて言ってください。

●「～てから」　

「～たあとで」と同じく「～て」の事柄（行為）が主節より早く起こることを表します。

「～て」節の主語、テンスについては「～前に」「～あとで」と同じです。

　(17)私が日本へ来てから、物価が高くなった。

　(18日本へ来てから、日本語の勉強を始める。

　(19)日本へ来てから、日本語の勉強を始めた。

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