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舞姬 森鸥外 (日文版)
时间:2007-03-15 01:10:30  来源:  作者:


後に間けぱ彼は相澤に逢ひしとき、余が相澤に與へし約束を聞き、またかの夕べ大臣に聞こえ上げし一諾を知り、俄に座より躍り上がり、面色さながら土の如く、「我豐太郎ぬし、かくまでに我をぱ欺き玉ひしか」と叫び、その場に僵れぬ。相澤は母を呼びて共に扶けて床に臥させしに、暫くして醒めしときは、目は直視したるまゝにて傍の人をも見知らず、我名を呼びていたく罵り、髪をむしり、蒲團を噛みなどし、また遽に心づきたる様にて物を探り討めたり。母の取りて與ふるものをば悉く抛ちしが、机の上なりし襁褓を與へたるとき、探りみて顔に押しあて、涙を流して泣きぬ。
これよりは騒ぐことはなけれど、精紳の作用は殆全く廢して、その痴なること赤兒の如くなり。醫に見せしに過劇なる心勞にて急に起りし「パラノイア」といふ病なれば、治癒の見込なしといふ。ダルドルフの癲狂院に入れむとせしに、泣き叫ぴて聽かず、後にはかの襁褓一つを身につけて、幾度か出しては見、見ては欷歔す。余が病牀をぱ離れねど、これさへ心ありてにはあらずと一見ゆ。たゞをりをり思ひ出したるやうに「藥を、藥を」といふのみ。
余が病は全く癒えぬ。エリスが生ける屍を抱きて千行の涙を濺ぎしは幾度ぞ。大臣に隨ひて歸東の途に上ぼりしときは、相澤と議りてエリスが母に微なる生計を營むに足るほどの資本を與ヘ、あはれなる狂女の胎内に遺しゝ子の生れむをりの事をも賴みおきぬ。
鳴呼、相津謀吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。されど我腦裡に一點の彼を憎むこゝろ今日までも残れりけり。

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