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舞姬 森鸥外 (日文版)
时间:2007-03-15 01:10:30  来源:  作者:

石炭をば早や積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと靜にて、熾熱燈の光の晴れがましきも徒なり。今宵は夜毎にこゝに集ひ束る骨牌仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人のみなれぱ。
五年前の事なりしが、平生の望足りて、洋行の官命を蒙り、このセイゴンの港まで夾し頃は、目に見るもの、耳に間くもの、一つとして新ならぬはなく、筆に任せて書き記しつる紀行文日ご一とに幾千言をかなしけむ、當時の新間に載せられて、世の人にもてはやされしかど、今日になりておもへば、穉き思想、身の程知らぬ放言、さらぬも尋常の動植金石、さては風俗などをさへ珍しげにしるしゝを、心ある人はいがにか見けむ。こたびは途に上りしとき、日記ものせむとて買ひし冊子もまだ自紙のまゝなるは、獨逸にて物學びせし間に、一種の「ニル、アドミラリイ」の氣象をや養ひ得たりけむ、あらず、これには別に故あり。
げに東に還る今の我は、西に航せし昔の我ならず、學間こそ猶心に飽き足らぬところも多かれ、浮世のうきふしをも知りたり、人の心の頼みがたきは言ふも更なり、われとわが心さへ變り易きをも悟り得たり。きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感觸を、筆に鴛して誰にが見せむ。これや日記の成らね縁故なる、あらず、これには別に故あり。
鳴呼、ブリンヂイシイの港を出でゝより、早や二十日あまりを經ぬ。世の常ならば生面の客にさへ交を結ぴて、旅の憂さを慰めあふが航海の習なるに、微恙にことよせて房の裡にのみ籠りて、同行の人々にも物言ふことの少きは、人知らぬ恨に頭のみ惱ましたればなり。此恨は初め一抹の雲の如く我が心を掠めて、瑞西の山色をも見せず、伊太利の古蹟にも心を留めさせず、中頃は世を厭い、身をはかなみて腸日ごとに九廻すともいふべき慘痛をわれに負わせ、今は心の奧に凝り固まりて、一點の翳りとのみなりたれど、文讀むごとに、物見るごとに、鏡に映る影、聲に應ずる響の如く、限りなき懐舊の情を呼び起こして、幾度となく我が心を苦しむ。嗚呼、いかにしてか此恨み鎖せむ。若し外の恨なりせば、詩に詠じ歌によめる後は心地すがすがしくもなりなむ。これのみは餘りに深く我心に彫りつけられたればさはあらじと思へど、今宵はあたりに人も無し、房奴の來て電氣線の鍵を捩るには猶程もあるぺければ、いで、その概略を文に綴りて見む。

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