您当前的位置:首页 > 学习资料 > 翻译习作 > 翻译探讨
东洋之秋
时间:2007-12-14 13:42:46  来源:本站原创|http://coffeejp.com/blog/index.php/27935/viewspace-3217  作者:华南虎

おれは日比谷公園を歩いてゐた。

   我在日比谷公园里散步。

 空には薄雲が重なり合つて、地平に近い樹々の上だけ、僅(わずか)にほの青い色を残してゐる。そのせゐか秋の木(こ)の間(ま)の路は、まだ夕暮が来ない内に、砂も、石も、枯草も、しつとりと濡れてゐるらしい。いや、路の右左に枝をさしかはせた篠懸(すずかけ)にも、露に洗はれたやうな薄明りが、やはり黄色い葉の一枚毎(ごと)にかすかな陰影を交(まじ)へながら、懶(ものう)げに漂つてゐるのである。

    空中的薄云,层层叠叠,仅在地平线近处的树木上方,留下了些许蔚蓝。或许正是这个缘故吧,使得秋天的林荫道上,在这黄昏未至之际,沙、石以及枯草,似乎皆已湿濡润泽了。不,不仅如此,就连路的左右两旁,枝杆横逸交错的悬铃木,也像被露水洗过的一般,盈盈闪亮,这薄薄的亮光,与每一片黄叶所带来的淡淡的阴影交织融合,懒懒地四散而去。

 おれは籐(とう)の杖を小脇にして、火の消えた葉巻を啣(くわ)へながら、別に何処(どこ)へ行かうと云ふ当(あて)もなく、寂しい散歩を続けてゐた。

    我腋下夹着藤杖,嘴里叼着熄灭了的雪茄,继续着漫无目的,寂寞的散步。

 そのうそ寒い路の上には、おれ以外に誰も歩いてゐない。路をさし挾(はさ)んだ篠懸も、ひつそりと黄色い葉を垂らしてゐる。仄(そく)かに霧の懸つてゐる行(ゆ)く手の樹々の間(あいだ)からは、唯、噴水のしぶく音が、百年の昔も変らないやうに、小止(おや)みないさざめきを送つて来る。その上今日(けふ)はどう云ふ訳か、公園の外の町の音も、まるで風の落ちた海の如く、蕭条(せうでう)とした木立(こだち)の向うに静まり返つてしまつたらしい。――と思ふと鋭い鶴の声が、しめやかな噴水の響を圧して、遠い林の奥の池から、一二度高く空へ挙つた。

   在这秋凉的路上,除我之外,更无一人行走。挟路而植的悬铃木,也悄无声息的耷拉下金黄的叶片。惟有前方细雾微着的树木之间传来的喷水声,似乎是百年如一日,一刻也不停息。非但如此,不知何故,今天公园外的街市,也如同风暴过后的大海,静静地躺在萧条的林木之外。就在此刻,一、二声凄厉的鹤鸣,盖过了淅淅沥沥的喷泉声,从远处林中的池塘中响起,直冲云霄。

 おれは散歩を続けながらも、云ひやうのない疲労と倦怠とが、重たくおれの心の上にのしかかつてゐるのを感じてゐた。寸刻も休みない売文(ばいぶん)生活! おれはこの儘たつた一人、悩ましいおれの創作力の空(そら)に、空(むな)しく黄昏の近づくのを待つてゐなければならないのであらうか。

   我继续散着步,感到一种说不出的疲惫、倦怠,沉沉地向我心头袭来。啊,我那不得片刻歇息的鬻文生涯!难道我就只得孤身只影,徒然地等待黄昏迫近我那恼人的创作能力的天空吗?


 さう云ふ内にこの公園にも、次第に黄昏が近づいて来た。おれの行く路の右左には、苔の匂いや落葉のが、混つた土のと一しよに、しつとりと冷たく動いてゐる。その中にうす甘いのするのは、人知れず木の間に腐つて行く花や果物の香りかも知れない。と思へば路ばたの水たまりの中にも、誰が摘んで捨てたのか、青ざめた薔薇(ばら)の花が一つ、土にもまみれずにつてゐた。もしこの秋のの中に、困憊(こんぱい)を重ねたおれ自身を名残りなく浸す事が出来たら――

  思绪间,黄昏已渐次临近公园。我脚下道路的左右两侧,弥漫着苔藓、落叶以及泥土的气味,阴冷、湿润。其中又略带甜香,那或许是默默无闻地腐烂于树木间的花、果之香吧。才念及此,随即看到在路旁水洼里,有一枝苍白的蔷薇,不知是谁摘了,却又抛在此处,花朵上尚未沾染泥土。如果我能将疲惫不堪的自己,毫不犹豫地投入到这个秋天之中的话……

 おれは思はず足を止めた。

   忽然,我不由自主地止住了脚步。

 おれの行く手には二人の男が、静に竹箒(たかぼうき)を動かしながら、路上に明く散り乱れた篠懸の落葉を掃いてゐる。その鳥の巣のやうな髪と云ひ、殆ど肌も蔽はない薄墨色(うすずみいろ)の破(やぶ)れ衣(ころも)と云ひ、或は又獣(けもの)にも紛(まが)ひさうな手足の爪の長さと云ひ、云ふまでもなく二人とも、この公園の掃除をする人夫(にんぶ)の類(たぐい)とは思はれない。のみならず更に不思議な事には、おれが立つて見てゐる間(あいだ)に、何処(どこ)からか飛んで来た鴉が二三羽、さつと大きな輪を描(えが)くと、黙然(もくねん)と箒を使つてゐる二人の肩や頭の上へ、先を争つて舞ひ下(さが)つた。が、二人は依然として、砂上に秋を撒(ま)き散らした篠懸の落葉を掃いてゐる。

 

   路前方,有两个男子,正静静地挥动着竹扫帚,清扫着散落在路面上的,凌乱的悬铃木枯叶。从他们乱如鸟窝的头发上、难以蔽体的淡黑色的破衣上,或从其手足之上迹同兽类的长指甲上,可以毫无疑问地看出,他们不像是公园里的清洁工。更不可思议的是,就在我驻足观望之时,不知从何处,飞来了二、三只乌鸦,划过一个大圆圈,争先恐后,悄不作声地落在了挥动着扫帚的那二人的肩膀、头顶。而那两人丝毫不为所动,依然静静地清扫着将秋意撒在砂道上的落业。


 おれは徐(おもむろ)に踵(くびす)を返して、火の消えた葉巻を啣へながら、寂しい篠懸の間の路を元来た方へ歩き出した。

我缓缓地转过身去,叼着熄了的雪茄,悄然地循着夹在悬铃木之间的来路走去。

 が、おれの心の中には、今までの疲労と倦怠との代りに、何時か静な悦びがしつとりと薄明(うすあかる)く溢(あふ)れてゐた。あの二人が死んだと思つたのは、憐むべきおれの迷ひたるに過ぎない。寒山拾得(かんざんじっとく)は生きてゐる。永劫の流転(るてん)を閲(けみ)しながらも、今日猶この公園の篠懸の落葉を掻いてゐる。あの二人が生きてゐる限り、懐しい古東洋の秋の夢は、まだ全く東京の町から消え去つてゐないのに違ひない。売文生活に疲れたおれをよみ返らせてくれる秋の夢は。

然而,不知不觉间,刚才还压在我心头的疲惫、倦怠烟消云散,取而代之的,是一股静静的喜悦,明快地荡漾开来。本以为那两个人已死了,原来那只不过是自己可怜的的迷妄而已。那两个人,寒山、拾得,仍然活着。检视着永劫之轮回,今天,他们犹在清扫着公园里的落叶。只要他们两个活着,无疑,令人留恋的惜日东洋之秋的梦,就肯定不会从东京消失。那能使我从疲惫的鬻文生涯中重获生机的秋之梦。

 おれは籐の杖を小脇にした儘、気軽く口笛を吹き鳴らして、篠懸の葉ばかりきらびやかな日比谷(ひびや)公園の門を出た。「寒山拾得は生きてゐる」と、口の内に独り呟(つぶや)きながら。


   我仍将藤仗挟在腋下,轻快地吹着口哨,走出缀满了粲粲落叶的日比谷公园的大门。口中喃喃道:“寒山、拾得,今犹在”。(大正九年三月)


咖啡日语 Ver.7 Created by Mashimaro