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舞姬 森鸥外 (日文版)
时间:2007-03-15 01:10:30  来源:  作者:


余は幼き比より嚴しき庭の訓を受けし甲斐に、父をぱ早く喪ひつれど、學問の荒み哀ふることなく、舊藩の學舘にありし日も、東京に出てゝ豫備學に通ひしときも、大學法學部に入りし後も、太田豐太郎といふ名はいつも一級の首にしるされたりしに、一人子の我を力になして世を渡る母の心は慰みけらし。十九の歳には學士の稱を受けて、大學の立ちてよりその頃までにまたなき名譽なりと人にも言はれ、某省に出仕して、故鄕なる母を都に呼び迎へ、樂しき年を送ること三とせぱかり、官長の覺え殊なりしかぱ、洋行して一課の事務を取り調ぺよとの命を受け、我名を成さむも、我家を興さむも、今ぞとおもふ心の勇み立ちて、五十を踰えし母に別るゝをもさまで悲しとは思はず、遙々と家を離れてペルリンの都に來ぬ。
余は模糊たる功名の念と、檢束に慣れたる勉強力とを持ちて、忽ちこの歐羅巴の新大都の中央に立てり。何等の光彩ぞ、我目を射むとするは。何等の色澤ぞ、我心を迷はさむとするは。菩提樹下と譯するときは、幽靜なる境なるぺく思はるれど、この大道髪の如きウンテル、デン、リンデンに来て兩邊なる石だゝみの人道を行く隊々の士女を見よ。胸張り肩聳えたる士官の、まだ維廉一世の街に臨める窗に倚り玉ふ頃なりげれば、様々の色に飾り成したる禮装をなしたる、妍き少女の巴里まねびの粧したる、彼も此も目を鷲かさぬはなきに、車道の土瀝靑の上を音もせで走るいろいろの馬車、雲に聳ゆる樓閣の少しとぎれたる處には、晴れたる空に夕立の音を間かせて漲り落つる噴井の水、遠く望めばブランデンブルク門を隔てゝ綠樹枝をさし交はしたる中より、半天に浮び出てたる凱旋塔の神女の像、この許多の景物目睫の間に聚まりたれば、始めてこゝに來しものゝ應接に遑なきも宜なり。されど我胸には縦ひいかなる境に遊ぴても、あだなる美觀に心をぱ動さじの誓ありて、つねに我を襲ふ外物を遮り留めたりき。
余が鈴索を引き鳴らして謁を通じ、おほやけの紹介状を出だして東來の意を告げし普魯西の官員は、皆快く余を迎へ、公使舘よりの手つゞきだに事なく濟みたらましかぱ、何事にもあれ、教へもし傅へもせむと約しき。喜ぱしきは、わが故里にて、獨逸、佛蘭西の語を學びしことなり。彼等は始めて余を見しとき、いづくにていつの間にかくは學び得つみと間はぬことなかりき。

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